第3話

「君も此処が好きなの?」

「あ、はい。此処に来ると何と無く落ち着くんです…。」

「そう…僕も此処は好きだよ、独りになりたい時は此処が良い…」

明陽は黒目勝ちで大きな目を細めて言った。

 春の陽射しの様に柔らかな雰囲気と優しい人柄に、皆敬意を込めてこの人を『明陽様』と呼ぶ

健介は其が何と無く分かる様な気がした。

「小日向君、お昼は?もう済んだの?」

「あっ!!」

 そう言われて健介は弁当を食べかけだった事を思い出した。

「あの、済みませんでした、失礼します。」

健介はそう言って頭を下げると、元の場所に戻って弁当の 続きを頬張り始めた。

すると其処へ明陽もやって来て、健介の隣へちょこんと並んで座った。

「あ、久我先輩は食べないんですか?」

 健介が何の気無しに尋ねた。

「僕はもう食べたから。」

「え、そうなんですか?」

 健介がちょっと意外だとゆう顔をした。

昼休みになって直ぐ此処に来た健介でさえ、まだこうやって弁当を食べているのに、明陽は一体何時の間に食べたと言うのだろうか?

健介はそんな事をチラッと思ってしまったのだ。

明陽はそんな健介の思いを察したのか、

「うん、早弁したから。」

と言ってニッコリ笑った。

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