第21話

「その手紙が3日前に施設に届きました。」


「送り主は…不明。ご丁寧に文字を印刷してくれてるので筆跡もわかりませんね。」


壱さんは便箋の裏と表をひっくり返しながら何度か見ると理人さんに手渡した。


「心当たりはある?」


理人さんの言葉に首を振る。


弟が失踪したことは、あたしと施設にいる人間しか知らないはず。2つ下の弟とは通っている高校も違うから情報も入ってこない。それに、友達にはどうしても言い出せなかった。


「でも、君宛に届いてるということは…送り主側は君のことを知っていたんだろうね…。」


…確かにそういうことだ。

分かってはいたが、今更実感が湧いてきて背筋が震えた。

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