第7話

そう言ってツーサイドアップは片手で引き摺っていた男をあたしの前に差し出す。

顔は殴られすぎて青く変色し、瞼は痛々しく腫れ上がっていた。


薄い唇は秀麗に弧を描き、美しいはずの笑顔が恐ろしくてたまらない。


……本気だ。

あたしが女だから、とかそんなのはきっとこいつには関係ない。


「…それとも、」


黙りこくったままのあたしにグッと近づいたツーサイドアップは細い指であたしの喉元をトントンと叩き


「…喋れないんならこの喉元掻っ切っちゃおっか?」


そんな悍ましいことを平然と言い放つ。

“殺される”

固まった思考の中、本能でそう感じた。

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