見えない未来
ふたりにとって初めての、幸せな夜を過ごした。
繰り返し愛を求めるレアに、スミスも何度も愛を注いだ。
彼女の反応は、人間のそれと全く同じだった。遺伝子細胞を受け継ぐ体は、成長とともに次第に人間化していくのかもしれない、と思った。
レアが悦びを感じている姿には、もうデータなど必要無かった。
「愛してる」
と互いに繰り返した言葉も、それらを越えた真実だったからだ。
夜明けの美しい光が窓から差し込む。
まだ隣で眠っているレアを見つめ、ルイスは体を起こして彼女の頬に手を触れた。
レアはまどろみながらきゅっと手を握り返してくる。
(愛してる)
ルイスは心の中でもう一度呟く。
これからは名前を変えて、二人でひっそりと田舎に暮らそう、と考えていた。
ようやく目を覚ましたレアは
「おはよう」
と笑顔を見せて口づけを求めてくる。
彼はそれに応えて長いキスを交わしながら、ふと(赤ん坊)という言葉がよぎった。
いくら何でも、そこまでは望めない。
彼女が、レアが居てくれたら自分はそれで充分だ。
だがもし、いつかレアがそれを望む日が来たとしたら…。
自分達の子どもまで、アンドロイドで人工的に創るのか。それは、幸せな事なのだろうか。
里親になれたとしても、いつまでも歳をとらない母親の事をどう説明すればいいのか。
…その前に、自分には寿命があるんだという事を初めて意識して、彼は少し身震いした。
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