おっさんに追いかけられる夢
海澪(みお)
追いかけられる夢
いつものように家からゴミを捨てるだけの行動。
けどそれだけじゃなかった。現実感はなく、朝も昼も夜も感じない無機質な周り。
そこであぁこれは夢だと自覚した。
私はあまり夢というものを起きたら覚えていないし見てても自覚なんてしない。
それでもなぜか夢なんだと感じた。手に持っている指定のゴミ袋の感覚は無かったし。
ただただ見知った道路を歩くだけ。
道路を挟む両隣には知り合いが経営している会社やそこに住んでる人の一軒家や賃貸アパートとかあるはずなのにそれも無かった。
別にそこに不思議はなかった。あるとするなら目の前のゴミ捨て場。
そこに1人のおじさんがいたのだ。
顔は分からなかった。向き的に背中を向けていたから。それでも雰囲気的におじさんだと思った。
おじさんは何かをしていた。
ゴソゴソ、ゴソゴソ。
私はなんか変な人だなと思いながら手にあったであろうゴミ袋を捨てるために近寄る。
一歩。二歩。……数歩近寄ればおじさんが何をしていたのか分かった。
ニワトリの頭を両手に1つずつもってゴミ捨て場のケースに擦り付けていた。
私は一気に不快感と困惑が押し寄せた。
だってケースの中にはニワトリの頭が何個か入っていたから。
即座にそっちに向かってゴミ袋を投げ捨てた。
おじさんが私に気付いたようで振り返るのを横目に私は某カバディ漫画の主人公のような動きで振り返り、全力疾走した。
後ろから追いかけられている。
一瞬で分かった。しかし夢だからか分からないが、自分の走っている足音ひとつ感じなかった。それでも追いかけられているのは分かった。
チラッと後ろを見れば少し離れた位置におじさんがいた。無機質な笑みだった。見てはいけない気がした。
無機質ってだけでも恐ろしいのに、それにプラスして笑ってるんだからそれはもう危機感しかなかった。
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。
もう私にはこの気持ちしかなかった。
どれくらい走ったか不明だが、このまま行けば今住んでいるであろう家だ。そのはずだが家はなく、その代わりに既に廃校になっている地元の母校である高校が見えた。
ええいままよ!
その学校に向かってさらに走った。
横開きの引き戸を開けながら中に入り、廊下を走る。そこで初めて私は声に出した。
「助けて先生っ!」
大きな声だったと思う。
自慢じゃないが私は小学で人数がいないので強制的にやらされた野球で鍛えられ、高校では弓道をやっていたため、結構響く声を持っている。
私の緊迫した声に気がついた2人の男性教師に私は走り寄った。
後ろから私の真似をするように抑揚のなさすぎるというか感情の乗っていない声がした。
「たすけてーせんせー。たすけてーせんせー。たすけてーせんせー」
ひっと出そうになった。
それでも我慢できたのはさすがと言わざるを得ないだろう。
おじさんはその2人の先生のおかげで捕まった。その2人は高校の頃、不出来だった私を卒業まで支えてくださった恩師だった。
1人は2年生からの担任。
1人は隣のクラスの担任であり、クラス共通の教科を教える先生。
先生方のおかげで事なきを得たが、もしあのままと思えば目を覚ましたあとも──これを書いている今も──恐ろしいに変わりない。
おっさんに追いかけられる夢 海澪(みお) @kiyohime
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