第17話 俺のハーレムが「俺(転生前)」に妨害される話し(Ⅱ)

 千二百年前、傷を癒す一羽の鶴から開湯の歴史が始まったという言い伝えられる山間の温泉地。


 周囲全て山、都会とは違う長閑な時間が流れてはいるが……


 まぁ~~ぶっちゃけ、風景はバブルの余韻と少子化過疎化が織りなす、典型的な「寂れた温泉地」である。


「いらっしゃいませ~」

 ご高齢の仲居さん満面の笑みでご挨拶。

「立派な旅館ですね」

「恐れ入りますぅ~」


 それでも本日宿泊するお宿は、当温泉地で最も格式高い温泉旅館。本来高校生が気軽に宿泊できる料金ではない。


 ドラゴン同輩のコネを使っての宿泊である。


 仲居さんから部屋に案内される。

「どうぞごゆっくり」

 ゆっくりと、戸が閉まった。


 全身から力が抜ける。


「はぁ~疲れた」

 俺は大の字になって寝転んだ。


 今回の宿泊、当然男子は俺だけ。


 現実世界ならば、二部屋必要なところ今回取った部屋は、があって一つだけ。


 ふすまを隔て隣は女子。はしゃぎ声。どうやらお着替え中のようだ。

「やはりラブコメ世界、最高だな」


 幸福感MAXマキシマム


 さて、仕切りは襖のみ、ここはラブコメ世界……覗かねば失礼に……ん? ……身体が動かない。「俺」が邪魔している。


「まぁいいさ。宿泊回。一晩中ラブコメ的ハプニングが連続する」


 ******


 さて、ラブコメ的宿泊施設事情を軽く考察しよう。


 ラブコメ世界、お泊まり……といえば基本的には「旅館」だろう。


 学園イベントでも、遊びやデートイベントでも、宿泊施設はその舞台はホテルではなく旅館が選択される。


 理由はしごく簡単。


 旅館の方がストーリーを回しやすいからだ。


 もし、ホテルでラブコメするとなると……個室に宿泊した主人公とヒロインは、どちらかの部屋に出向かなければならなくなる。


 当然理由、大義名分が必要となる。仮にラブコメ世界の奇跡、で同室となってとしても……


 食事は(外)レストラン、お風呂はユニットバス。


 ドラマやハプニングが発生し難い。



 だが、温泉旅館なら……


 ヒロイン達は「浴衣」に着替える。「浴衣」はお泊まり回を彩る特別な衣装、非日常感がある。


 更に浴衣は独特のエロさを醸し出す、諸兄も同意するはずだ。


 ナーロッパ系異世界転生系作品ですら、何故か温泉旅館は存在するというご都合主義万歳の作品も数多く見かける。



 超絶美少女達の浴衣姿、エロ可愛い。


 一分の隙無く、しっかりピッチリ着ていても良し。


 若干着崩しても良し。


 半脱ぎもまた良し。 


 そして普段と違う髪型もまたまた良し。

 

 想像して欲しい……普段とは違う、浴衣姿のヒロインは思わず「☆」やレビュー、コメントや♡を貰える可愛らしさ。


 諸兄は、旅館の浴衣と聞いたら、どんな、作品、どんなヒロインを思い出すだろうか……? 我が創造主マイマスターは「ラブひな」を思いだしたという。




 一般的に旅館は、日本家屋がベースとなっており、館内はである、浴衣(部屋着)で歩き回れ、風景を楽しめ、遊戯施設も充実している。


 そして最も重要なのは「風呂」。旅館の風呂は様々なバリエーション。露天風呂に温泉。背景や舞台としても作劇しやすい。


 しかもするのが基本。


 日本の旅館にとって「風呂」の最も重要な施設。ここは高級旅館、気合いの入った風景描写は良作の証。


 負けヒロイン達は一日中遊び回った後なのに、まだまだ元気だ。


 脱衣所で浴衣を脱ぐヒロイン達。


 一つ……また一つ脱いだ服がかごに入れられていく。浴衣、そして使用済みの下着類。


 服を脱ぐという行為は、肝心なところが描写されなくても☆☆☆EXCELLENTになってしまう。


 諸兄は、オーガ後輩の篭が、サキュバスちゃん先輩の篭が、そしてドラゴン同輩の篭がどんな状態になっているか……?


 熱い考察の結果を是非「応援コメント欄」に♡を添えて書き込んで欲しい。


 脱衣所から風呂場へ。


 日本庭園と海岸の風景が織りなす、絶景が自慢の露天風呂。


「わぁ~素敵♡」

 オーガ後輩、素直に感動する。

「キレイ」

 サキュバスちゃん先輩もポツリ。

「さすが自慢の露天風呂なだけはあるな」

 ドラゴン同輩も頷いた。


 ヒロイン達がキラキラとした眼で、海岸の風景を眺める。


 最高級旅館の最高級露天風呂。俗に言う大浴場。

「部屋風呂も良いが、わたくしは大勢で入るお風呂が好きですわ」


 入浴シーン、入浴用に髪型を変化させているの作品は……良い。


「先輩! 先輩! お背中流しますよ」

「うむ、くるしゅうないぞ、フフッ」

「さきゅもしたい」

「そうだな、皆でやるか」


 三人並んで身体を洗う。


 そして……


 まったりと風呂に入っている三負けヒロイン。

「「「はぁ~~~~~~」」」

 癒され顔のヒロイン達。


 サキュバスちゃん先輩、視線、また視線。


 オーガ後輩の圧倒的に柔らかそう、巨大なおっぱいが浮いている。


 ドラゴン同輩鍛え上げられ、ツンと重力に逆らったおっぱいも十二分にデカい。


 自分は……


「きょういのかくさしゃかい」

 サキュバスちゃん先輩はポツリと呟いた。


 風呂上がり、バスタオル姿のヒロイン達、コーヒー牛乳。

 ラブコメ黎明期から続く、温泉旅館での定番シーン。


 まぁ~~~~っ、ビジュアルで表現しなければ入浴シーンの魅力は半減する。


 いずれ、マンガ化、アニメ化されたのなら、じっくりねっとり、エロエロに描写される……かも知れない。


 うむ、じっくり堪能させてもらったぞ。




 一方俺は…………以下略。マンガなら一コマで表現されていたであろう。


 老人と子供、男の入浴シーンなど描写しても仕方が無いだろう。ここは華やかさMAX、ラブコメ世界なのだから。


 ******


 旅館といえば、風呂。次は料理。


 食事シーンだ。

 今回は敢えて食堂。立派なお膳がテーブルに並んでいる。


「美味しそう」

「腕のいい料理人なのだろうな」

「上手そう」


 修学旅行や部活の合宿などでは良くあるシーンだ。

 

 AI作画やテンプレではない。取材に基づく丁寧な食事の描写、特にアニメの場合「神は細部に宿る」……然りだ。


「ではいただこう」

「いただきます」


 ラブコメでは、食事シーンも重要である。


 ヒロインの食事の仕方にもキャラの魅力が垣間見える。ドラゴン同輩は流石セレブ、常に背筋がのび、常に綺麗なお食事のしかた。

 浴衣はきっちり、逆に色香が増している。纏められた髪、うなじに魅力。


 サキュバスちゃん先輩は小食、少しずつ少しずつお食事、正座は苦手、座り方が可愛い。浴衣はブカブカ、隙が多い。見えそうで見えない。


「うめな」

 食事と言えば、オーガ後輩。全てが特別製の特盛りでも、あっという間にお膳の食事が消えていく。

 座り方は、ちょっとだらしない。パンツが見えちゃっている、着崩され、おっぱいが零れ落ちそうになっている。


 三人の食事シーンをじっくり堪能。

「モブよ、なにジッと見ている」

「うむ、食事も美味いが。ラブコメ的には「食事シーン」そのものが幸福感をもたらす、重要シーンだ」

 俺は一人頷いた。


「そうだ、俺は今、ところだ」


 女の子が美味しそうに食事をしているシーンというのは、諸兄もほっこりするだろう、子供の食事シーンも同じだ。


 食べるという行為は、幸福と直結している。

 

 戦場報道などでよくみかける、戦場で冷たい戦闘職レーションを食べる食事シーン……悲しさが鑑賞者の心のに響く。


 食事シーンは意外と重要だと思っている。


 諸兄はどんな作品のどんな食事シーンが印象に残っているか? 機会があれば教えて欲しい。


 ******



 腹もふくれた。ここは温泉地、ラブコメ的娯楽の定番と言えば。


 温泉卓球ーーーーっ♡


 浴衣を着用したヒロイン達が卓球を楽しむ。

 いい感じに乱れた浴衣の破壊力は俺の股間を刺激する。


「えい!」

「えいえい!」


 卓球台を球が何度も往復する。


 激しい運動、半ば着崩れていたオーガ後輩の浴衣は乱れに乱れ……うむ、だらしな可愛いぞ。大事なところが零れ落ちそうになっている。


「あっ!」

 空振り。卓球の球が、胸元に吸い込まれていった。 ……いいな球。


「やだぁくすぐったい」

「いいな球」



 流石のぴちっとしていたドラゴン同輩も若干着崩れ。

 ランジェリーがチラリとだけ見えてしまうのも、よい。


「あ……脱げちゃった」

 浴衣がほどけサキュバスちゃん先輩丸見え。何とノーブラ。何故か卓球の球が微妙に全てを隠してくれる。まさにラブコメの奇跡。



 最後は俺とドラゴン同輩のガチンコ勝負。

 いい感じでラリーが続く。


 少しずつ……確実に着崩れる浴衣。チラリの面積が増えていく。

 だが、勝負となるとドラゴン同輩。我を忘れて夢中になる。


 上気、徐々にエロさが増してくる。 


 はやり浴衣は、最高だ。


 ラブコメでは旅館が選択される理由、諸兄も十二分に理解していただけたのではないだろうか?


 ******


 温泉卓球でまた一汗かいてしまった負けヒロイン達。


「また汗をかいてしまいわしたわね」

「さきゅ、お風呂行きたい」

「お風呂、入り直しましょう」


 と言う事で、再び温泉へ。

 今回は部屋に設置された家族露天風呂。


 喧騒とは隔絶された、静かなたたずまい。


 虫の音、雲間の月、そしてお湯の流れる音。

「気持ちいいわね」

「うん、すごくいい」

「蕩けるわぁ」


 風呂と、風景が織りなす、超絶美少女の入浴シーン。


 諸兄は温泉旅館、どんな入浴シーンが印象的だったか? 是非「応援コメント欄」に♡を添えて書き込んで欲しい。


 ******


 ラストは部屋でだべる。


 成人しているキャラ達ならば、お酒が入って盛り上がるだろう。

 

 中高生なら、恋バナで話しが展開する……なんて事もある。


 合宿、修学旅行系ならば。ドッキリ!? ヒロインと同衾ハプニング……良くあるパターンだ。


 布団に隠れてあれやこれや。「性描写有り」であれば、そのまま最後まで……という作品も多い。



 温泉旅館でヒロイン達と宿泊する。数多のラブコメ作品、どんなヒロインのどんなシーンが印象に残っているか?

 是非「応援コメント欄」に♡を添えて書き込んで欲しい。


 ******


 そして、夏の夜と言えば……


「花火をしよう」

「夏と言えば花火だね」

「うん、花火いい」


 ……と言うわけで、ご都合主義の奇跡ミラクル

 経過時間を無視し、最後は海岸に戻りちょっとした花火大会。


 ヒロイン達と花火を楽しむ。

 ラブコメでは花火も鉄板シチュエーション。


 祭りの花火もドラマになるし、友人達と海岸や河川敷で楽しむ花火も最高だ。 


 花火を楽しみ負けヒロイン達。

「キレイだね」

「うん」


 めいっぱい花火を振り回して踊る。


 しゃがんで線香花火をジッと見つめる。


 吹き出る花火をバックに満面の笑みを浮かべる美少女。


 花火が暴発、ビックリして思わず抱きつかれる。

 その後、恥ずかしがる主人公とヒロイン……等々。


 どれも最高の絵になるシチュエーション。


 ラブコメではありふれた話。 ……けど。


現実リアルでは、決してありえない……たとえ奇跡的にあっても、俺達は体験する事の無い幸福な一瞬」


 二つの世界を知る俺故、絶頂の幸福感と無限に続いていく空虚感。


「……………」


 俺は、はしゃぎ回る美少女達を少し遠くから眺めていた。そしてこの世界、風景も、空も星も全てがラブコメ世界の創造物。

「波の音だけがヤケにリアルだ」


 俺は小さく呟いた。



 ******



 夜も深夜帯に近付こうとしていた。

 サキュバスちゃん先輩も眠そうだ。

「さて、帰る……ん」


 ラブコメ世界にで感じることの少ない、殺意と憎しみが入り混じる闘気。

「嫉妬の闘気バトル・オーラ

 おっと、これは我が創造主マイマスターのバトル作品だった。


「だが、この殺気……闘気は本物だ。誰だ?」

 同じく戦姫とも噂されるドラゴン同輩も反応。

「何奴!?」


 真っ暗な海から、一人誰か歩き近付いてくる。

「部活の会場はここか」


 雲間から月、砂浜を照らし出す。


「黒皇……か……」

「知っているだろう、僕はこの「TRPG研究会」の部員だろう」


 現れたのは、幽霊部員だったはずの黒皇。


「ちょっと顔を出さない間に、ずいぶん華やかになったね、うちの部活」

「変らないさ、部員は俺とお前の二人だけだ」

「ふ~ん」


 黒皇は三人の超絶美少女を見つめる。

 三人は固まっていた。あまりに意外な黒皇の登場。


「遅くなったが、僕も合宿に参加しようと思ってね。ダメかい?」

「この部活を設立したのは黒皇おまえだ。かまわんさ」


 三人は黒皇を見つめている。

 

 おっと、最終盤……ここで黒皇が登場ですか。

「ラブコメの禁じ手、NTR展開来たか……フッ」


 ラブコメ最大の禁じ手「NTR」、詳しくは最後【創作論・評論】で考察するとしよう。


「ところでモブ君、おりいって君に頼みがあるのだが……」

「なんだ?」


「僕を匿ってかくまってくれ!! 頼む」

 黒皇は情けない声で、懇願した。



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