第二話
「三匹のねこちゃん」
(第二話 ニコ)
堀川士朗
春になりました。
こないだからニコはちょっと気持ちがソワソワフワフワしていました。
「びーびーばらばらばらばら、びーびーびーばっぱぱらっぽー」
「何それサンコ」
「あのさ、スキャットは滑舌の練習になるよ、ニコ。びーびーばっぱぱらっぽー。スキャット。ねこだけに」
「何で」
「人間と話す時にねこのなまりが取れてないといつか人間にバレちゃうから」
「そっか。でもあたし大丈夫。あたしの変身は超一流だからちょっとやそっとじゃねこだってバレないわ」
「でも気をつけなね。たまに勘の良い人間もいるから」
「うん。あたしこれからデートなのよ。行ってくるね」
「そうなんだ、ニコ。行ってらっしゃい」
ニコは人間に変身して、はなはな病院に行きました。
ニコが好きな男の子、篠山くんのお見舞いです。
篠山くんは、先週自転車とぶつかって、ケガは大したことないのですが大事を取ってはなはな病院に入院していました。
篠山くんの病室は個室でした。
「ニコちゃん。今日も来てくれたね」
「ふふふ」
「かびんの水も代えてくれたんだね。ありがとう」
「うん」
「ところでニコちゃん。きみの家にねこはいるかい?」
「え?……ううん」
ニコはうそをつきました。
「ニコちゃんからは、なんかねこの香りがする。ぼく、ねこアレルギーなんだ。ねこだけはダメなんだ」
「え?……そうなんだ……あたしもう帰るわ。お大事に篠山くん。さよなら」
「え?うん」
ニコは、泣きながらねこねこはうすに帰ってきました。
「うえ~ん。篠山くん、ねこきらいなんだって!ねこアレルギーなんだって!うえ~ん。もう篠山くんと公園のボートで遊ぶ事も、一緒にお買い物する事も、ランチを食べる事も出来ない!もう篠山くんには会えない~。うえ~ん!」
なぐさめるイッコとサンコ。
「……でも。それでも私、人間が好き。人間に変身しておしゃれしたい!またデートもしたい!」
ニコは泣くのをやめました。
今日は鍋パーティーの日です。
お魚をたくさん入れます。
お魚が大好きなニコが元気を取り戻すように。
つづく
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