都市伝説ガ ウマレマシタ
鞠目
ある高校の休み時間
桜の花は散り、青々とした葉が茂り始めた春の天気の良い日。
ある高校の一時間目と二時間目の間の休み時間。皆が皆思い思いに過ごす騒がしい教室の中で、前後の席に並んだ二人の女子高生がスマホ片手に画面を見ながら喋っている。
「ねえ、パトロール男って知ってる?」
「なにそれ? 芸人?」
「違う違う、都市伝説なんだけど昨日バイトの先輩が教えてくれたの」
「都市伝説? へー初めて聞くかも。てか、名前ダサくない?」
「だよね。でさ、なんかね、夜の八時以降に外でスマホを見ながら歩いていたら突然後ろから声をかけられるんだって。『歩きスマホは危ないよ』って」
「なにそれ、優しいけどなんかキモくない?」
「キモい。でも不思議なのが振り向いても誰もいないんだって」
「え、怖っ」
「でしょう。でねでね、無視してスマホを見ていると赤信号の横断歩道とかで後ろから押されるんだって。それでかなりたくさんの人が転んだり車に轢かれたりしてるんだって」
「え、なにそれ事件じゃん」
「そう! なのに犯人はまだ捕まってないみたいなんだよね。同じ塾の子にこの話をしたらその子の高校でも五件ぐらい似た事件が起こってるんだって。でもまだ犯人は分からないみたい」
「それ本当ならかなり怖いね」
「ねー本当」
「あ、次移動教室だった」
「そうだった、行こ行こ」
生徒たちがばらばらと教室を出て行く。さっきまで話していた二人も後を追うように出ていった。彼女たちが教室を出る最後の生徒だった。最後に教室を出る生徒が電気を消すことになっているのだが二人は忘れていたのか消さずに出ていった。
誰もいない教室。空気中に小さな埃が舞っているのを蛍光灯がただただ照らしている。
「やはり広がる様子を直で見るのは楽しいものですね」
突然、誰もいないはずの教室で男の楽しそうな声が響いた。姿は見えないがコツ、コツ、コツ、と無機質な足音が何回かした後でパチンと教室の電気が消えた。
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