推しをおとすと死ぬ恋愛デスゲーム、攻略不能なんだが!?

あきせ

第1話 勇者召喚

目が覚めた瞬間、俺は金の椅子に座らされていた。

 頭の中が真っ白で、まぶしい天井と、豪華な絨毯と、騎士団の鋭い視線に囲まれている。


「……は?」


「目覚められましたか、勇者様」

 凛とした声が響く。金髪碧眼の美少女が、まるで絵画から抜け出たような美貌で、俺の前に跪いていた。


 ――誰?この超絶美人。


「我が名はリリス・グレイハート。あなたを守る、護衛騎士です。今より生涯をかけて、あなたにお仕えします」


「ちょっと待って待って!?え、俺、なんでこんな……」


 ようやく俺の頭が追いついてくる。

 ――確か、俺は通学中にトラックに撥ねられて、そのまま……死んだんじゃなかったか?


「ご安心を、勇者様」

 続いて現れたのは、ふわりとした金髪をなびかせた聖女のような女性。

「あなたはこの世界を救うべく、神々の手によって召喚されたのです」


「……マジで異世界召喚!?」

 どこぞのラノベみたいな展開が、いま目の前で起きてる。


「こちらは、あなたを支える七人の聖なる乙女たちです」

 女神が手を差し伸べると、ずらりと並ぶ美少女たち。


・口数少ない忠義の騎士(しかも超美人)

・人懐っこい耳付きの獣人少女

・天才っぽいけど目つきが怖い魔法使い

・包み込むような笑みの聖女

・ツンデレ全開のお姫様

・ポワポワ天然な神様見習い

・そして……あれ、なんかひとりだけ空気違う子が……


 ――全員、ヒロイン級。

 美少女、美女、美幼女? とにかく全属性コンプリートしてる。


「この世界の危機を救えるのは、あなた様ただ一人」

「そしてあなたの“心”こそが、この世界の命運を左右するのです」


「……え、心って? なんか重くない?」


「どうか――この七人を導いてください。愛し、選び、そして救ってください」


 女神の声が、やけに意味深に聞こえたのは、気のせいじゃなかった。



 このときの俺は、まだ知らなかった。

 この中の誰か一人を愛せば、世界が滅ぶことを。


 ――いや、誰を愛しても滅ぶって、どういうことだよ!?

 後日、俺は知ることになる。


 この世界、ヒロインが全部ラスボスなんだって。

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