うたかたの日々

yayuyo3

1、チュッパチャップスをもう一本

ある晴れた日の空の色は夕焼け色で、雲の隙間から落ちて来る日差しの粒がまるで飴玉のようだった。「あなたはどこからきたの?」そう隣で、空から落ちてきた飴を舐めながら歩いている女の子が僕に聞くから、私は照れてしまって、そのほっぺたの色はお天道様の夕焼け色よりもさらに赤く色付いた。

 「そんなこと聞かれたって、答えようがないじゃないか。君は意地悪だね。」と僕は言った。それでも、彼女は全然ぼくの攻撃など豆腐の固さ程度のもので、ふにゃふにゃだとでも言いたいかのように、あっけなく無視し、興味なさそうに、美味しそうに飴を舐めながら、同じ速度で隣を歩いていた。

 自転車がじゃまだった。例えば、思い切って彼女の手を掴んで、歩くこともできたのかもしれない。でも、両手はハンドルでふさがっていたし、片手で自転車を押して歩くには、その自転車は巨大で、重すぎた。

 「もしね。もし君がそこの土手から飛び降りて、あの川に飛び込んだら、私はあなたと付き合ってもいいわよ」

 今度は左ポケットから出したチュッパチャップスを舐めながら、彼女は言った。緑色のチュッパチャップスだったので、彼女の舌は緑色になっているだろうなと思った。そして緑色の舌は、どんなチュッパチャップスの味がするのかを想像した。

「それは何味のチュッパチャップスなんだい?」

「メロンクリームソーダ味よ」彼女は答えてくれた。僕はあまりの嬉しさに、今度メロンクリームソーダ味のチュッパチャップスをコンビニで買おうと決心した。そのとき、彼女はどんな味だか気になるとでも言いたいかのように僕の顔をしたから覗き込んだ。彼女の瞳は夕焼け空に焼かれていて、ピンク色だった。危うく吸い込まれそうになった。吸い込まれたら、お空から落ちて、落下してしまうところだった。

「ぼく、メロンクリームソーダ―大好きなんだ」

そういうと、さもありなんとでも言いたげな顔をした後、意地悪な考えが浮かんだようで、彼女は口元に淡い笑みを浮かべた。口角が上がり、北欧の特に寒い夜にしか見られないような夜の月の形の笑みが美しかった。。

彼女は「にゃん、にゃん」と言った。そしてもう一度下から僕を覗き込んで「にゃん、にゃん、にゃん」と言った。もちろん、その言葉の意味は分からないが、僕もなんだか楽しくなってきて、「わん、わん」と言った。彼女が笑うから、夜の空にはいくつもの三日月が現れて、まるで昼間のように白い夜になった。ぼくは、我慢が出来なくなり、自転車を手放し、土手に捨て、彼女にキスをした。すると、私の舌も緑色になった。


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