第5話 指揮官と愉快な仲間たち、ダンジョンへ
ゼクスをマテリアライズさせて、検証を終えた俺達は再びダンジョンへ侵入することを決めた。
「整列」
俺の声に応じ、セシリアが楽しげにホイッスルを鳴らす。(モンスター寄せに使えるかとマテリアライズしてみたものの、今のところその効果は皆無。すっかり彼女の玩具になっている)
俺の眼前に、ゼクスを先頭に量産機チームが素早く整列する。マナクリスタルの関係でまだ六体だけだが、その規律正しい姿は頼もしい。
内訳は、ゼクスを隊長とするAチーム(ゼクス、イエロー03、レッド01)、そしてブルー04を隊長とするBチーム(ブルー04、オレンジ02、グリーン05)だ。
それぞれの機体は装甲の色で識別している。
部隊自体の名前はレインボー01。ネイビーなゼクスも含めて虹の色だから因んでみた。そのうち紫も追加したいものだ。
「本日の作戦目標はダンジョン内の地形把握と、マナクリスタルの回収だ。ゼクス、準備は?」
「マナクリスタル回収用装備、地形記録装置、共に問題ありません」
「チーム編成は?」
「Aチームは司令官と同行し、地形記録と遭遇したモンスターの討伐を主任務とします。Bチームは、先行して広範囲の哨戒を担当します」
「別班との通信手段は?」
「司令官がマテリアライズされた通信機を使用します。起動テストも完了済みです」
「了解した」
ミリタリーの知識はほとんどないに等しい。正直、フィーリングで指示を出している部分も多い。だが、作戦の目的と確認事項を共有することは重要だと考えている。
「本日は日が暮れるまで探索を行う。時計はないがおおよそ18時を目安に撤退する。また、先日の蟻のような大規模な群れに遭遇した場合は、直ちに撤退する。その他、予期せぬ事態が発生した場合は、速やかにこちらに連絡するように。以上、行動開始」
「了解」
力強い返答と共に、Bチームの三機──ブルー04、オレンジ02、グリーン05が先行してダンジョンへと侵入していく。
「セシリア、準備は?」
「バッチリですわ。シャーロットちゃんも、暴れたがってますわ」
頼もしい返事をしてくれる。
ちなみにシャーロットちゃんとは、今彼女が肩に担いでいるビームスナイパーライフルである。弾丸の心配はないが、撃つ時には魔力を消費する代物だ。
「ならば憂い無し、だね」
ちなみに俺は透明シールドやヘルメットをつけた防御スタイル。確か警察の特殊装備だった筈だ。
足手まといかもしれないが、拠点で1人でいるのも危ないのでしょうがない。いざという時は俺の特殊警棒が火を吹くぜ。
先攻チームが安全確認を終えると、ゼクスがこちらを振り返った。
「侵入口に敵影はありません。我々も進みましょう」
「ああ、分かった」
ゼクスに促されAチームと一緒にダンジョンへ侵入する。
そしてあの青空のもとに再び舞い戻ったのである。
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「ふっ飛ばしますわ」
シャーロットの銃口が、先に現れた緑色の肌を持つ小型の人型、ゴブリンを捉え、セシリアがトリガーを引いた。
「ヒット、ですわ」
「よっしゃあ、突貫するぜ!」
「ズルいぜ、イエロー!」
セシリアの射撃と同時に、ライフルを構えたイエロー03が勢いよく飛び出した。少し遅れて、二本のブレードを構えたレッド01も、それに続く。
「お前達……」
呆れたような声を上げたのはゼクスだ。
確かにこちらの先制攻撃後、追撃する手筈だが、それはそれとしてこちらの合図を待たなかったり、司令官を置いてくのはどうなのだ……と。
「申し訳ありません」
「まあ。今は遅れずに行く方が先かな」
「参りましょう」
ひと足遅れて俺達3人も走り出す。
それにしても随分個性的なメンバーだ。ゼクスはいかにも軍人然としてるのに、あの二人はお調子者と近接型脳筋だし。
ちなみにゴブリンは、二機の量産機によって、あっという間に制圧されていた。これまでの戦闘で、一対一ならば量産機が余裕を持って相手をできることは分かっていた。敵は三体、その内一体はセシリアの奇襲によって既に戦闘不能。奇襲によって完全に意表を突かれたゴブリンに、勝ち目などなかっただろう。
ダンジョンの探索は、今のところ順調に進んでいる。
特に、様々な探索装備を搭載したグリーン05の働きは目覚ましく、おかげでモンスターをコンスタントに倒すことができ、いつの間にか、先日の蟻の群れから得られたマナクリスタルの三分の一ほどの量が、新たに集まっていた。
おまけに、いくつかゴブリンの巣穴らしき場所も見つけている。
後で、グリーン05にはしっかりと労いの言葉をかけてやらなければ。
オルトロスちゃんの力を借りれば、これらの巣穴からも安全に大量のマナクリスタルを回収できるだろう。
この調子でいけば、さらに探索部隊を拡大していくことも可能だろう。具体的には、今日得たマナクリスタルと、ゴブリンの巣穴から回収できるであろう分を合わせれば、同じ規模のチームを、もう二隊ほど追加する余裕がありそうだ。
「お前たち、勝手に突っ込むなと言ったはずだろう」
「すまねぇ隊長、でもよ、こういう時って、勢いが大事じゃないっすか!」
「勢いで戦場を駆けるのは結構だが、我々は部隊だ。命令無視は減点対象とする」
「え、減点て何!? 数値化されるの!?」
「される」
「俺も!?」
「当たり前だ」
「マジかよ……」
ゼクスの二人へのお説教をBGMに、俺は今後の戦力増強に期待を膨らませていた。
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