絶望
藤泉都理
絶望
独房から死刑場までの連行。
死刑執行言い渡し時の立ち会い。
手錠をかけ、顔面を覆う白布を結び、刑壇に立たせて足を縛り、首に絞縄を掛ける。
執行後は絞縄を解き、検視後に湯かんをして、宗教に合わせた装束を着せ納棺する。
通夜と葬儀に当たる教誨に立ち合う。
棺を遺体運搬車に載せる。
出棺の際は整列して敬礼で見送る。
刑務官だった私は夢を見る。
死刑執行に勤める夢。
娘が心臓移植をして命を永らえる事ができてからは毎日。
誰も信じないだろうが、心臓移植をしてから娘は顔が変わった。
顔だけではない。
かつて死刑執行した女性と口調も仕草も思考まで、どれもこれも瓜二つになってしまったのだ。
無差別殺人者である女性と、
私が殺した女性と、
私は馬が合っていた。
娘の変化は本当に心臓が原因なのか。
それとも、
職務から解放されても死刑執行から逃れられる事はない。
歓喜するよりも絶望する。
あなたと娘さんは本当にそっくりですねと言われるたびに、
私が、
絶望 藤泉都理 @fujitori
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