第十話 食堂の会話

「そういえばさ、みんなは『生徒会則』をどう思うー??」




「最初はびっくりしたけど、俺目線は全然悪くないシステムに見えるかな!」




「そーね、ウチも入学式終わるまで会話がダメっていうのを見たとき、めっちゃびっくりしたー!!」




「私は、びっくりしたというより、ちょっと面白そうだなーって思った! 実は、今日登校するときに、会話をしないで意思の疎通をしようとしててね、そのときの相手のリアクションが面白くて!! こういう普通じゃありえないことが起きるかもしれないっていうのは生徒会則の面白いところだと思うよ!」




「偶然だな。オレも今日の朝似たようなことがあって、オレは逆に相手に困らされた。ただ、この生徒会則は人見知りには悪くないルールに見えたかな。話さなくてもいい理由を向こうから提供してもらえるからね。ちなみにソースはオレだ」




「あっはははー!! 二人に似たような出来事があったんだねー! ウチは登校してるときソワソワしちゃった! だってせっかくの入学式だよ!! いっぱい友達作るチャンスだったのに……。ウチも人見知りだけど、もっと話したかったよーー」




「小芽生さん、『もっと話したかったよーー』って言う人は、人見知りとはあまり言わないんじゃ…」




「そうかもー!! カエデ君は鋭いねー! もしかして頭の回転速い感じ??」




「いや、オレの頭はコーヒーカップを全力で回すときくらい遅いよ。というかさっきのツッコミは、多分オレ以外の二人も考えていたと思う」




「えー!? うそー!??……コーヒーカップを全力で回したら結構速いんじゃ……っていうか、 望君! サクちゃん!……マジ??」




「マジ」「マジ」




「えーー!! 三人とも頭いいってことー?? えっ…もしかして…ウチの頭が悪いっていう可能性は……」




「……」




「ちょっと三人とも目を逸らさないでよー!! もう!!」




「まあまあ、小芽生さん! そ、そうだ! 小芽生さんの下の名前は『もみじ』だよね? 俺、気になってたんだけどさ、名前決めるとき、『もみじ』が可愛いから決めたって言ってたけど、もみじが好きなの?」




「望君、覚えててくれたんだ…! ウチは別に、もみじが特段好きってわけじゃないけどね、この学校って『花梗高等学校』じゃん? んで、新入生挨拶していたのは『サクラさん』だったよね? それで植物つながりっていうのと、ウチは秋が好きだから『もみじ』にしたってわけ!」




「へー!! 小芽生さんはいろいろ考えて決めたんだね! 俺なんて、夢を望むから『夢乃望』って…安直だったかな」




「そんなことないよ! 望君の名前も良い名前だと思う! 夢に向けて頑張る男子ってかっこいいと思うし!」




「そうだよ、夢乃君。それに、安直さならオレの『カエデ』なんて本名だしな」




「私なんて、下二桁の数字を名前にするっていう、椿さんのパクリだよ! それに比べたら、夢乃君はすごくいい名前だよ!」




「そうなのかな、気を使わせてしまったみたいですまない」




「全然! ウチら友達でしょ?? いいのいいの!! 天賦才人さいとって名前よりは全然いいと思うし!!」




「あぁー、あの自称天才の。彼とはあまり関わるつもりはないけど、あの名前、オレは好きだな」




「えー!! なんでー??」




「んー…面白いからかな」




「まあ、面白くはあるけど……」




「俺もどちらかというと、良い派かな!! 結局はその人の個性だし!!」




「確かに…その名前を、その人の個性って見ることもできるかもねー!! 印象にも残りやすいし!! 逆に、あまり印象に残ってないんだけどさー、クラスの何人かは自分の本名っぽかったけど、あれって生徒会則的に問題ないの? 本名禁止のはずじゃなかったっけ??」




「私が覚えている範囲だと、確か、自分の本名を『フルネーム』で知られたらダメってルールじゃなかったっけ? そうじゃないと、カエデ君とかはもう生徒会則に違反しちゃってるよね!」




「そのはず。入学式のときにそうやって言ってた。生徒会則の詳しい情報とかは、アプリに載ってるんじゃないか?」




「おぉー! やっぱりカエデ君、頭の回転速いじゃーん!! どれどれー…おっ! 書いてある! サクちゃんの言ってた通り、フルネームを知られたらダメって書いてる!! じゃあカエデ君は苗字がバレてないからセーフってことね!!」




「そうだね。苗字がバレない限りは。ね」




「ちょっと、含みのある言い方やめてよー!! 一応ウチらの代表なんでしょー??」




「え、小芽生さん、オレが代表ってことを知ってるってことは、自己紹介聞いてたの?」




「え?? もちろんだよ??」




「そ、そうか(スマホを触っていた気がするが)…」




「んで、サクちゃんが副代表だよね!! こんなに可愛い子が副代表になってくれるなんて感激だよー!! よろしくね!!」




「うん! 任せて! どんなことをする立場なのかはよく分からないけど!」




「俺からも、よろしく!! カエデ、伊波さん!」




「正直なところ、みんなに注目される存在にはなりたくないけど…まぁ、ぼちぼちやるよ」




「それで構わない、じゃあそろそろ帰ろっか!!」




「おっけー!! みんな帰る方向同じだよね?? 良かったら一緒に話しながら帰ろーよ! 一人ぼっちだった朝よりも絶対楽しいし!!」




「いいねー! 俺は賛成!」


「オレもいいよ」


「私も」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 20:00 予定は変更される可能性があります

夢見た自由は遠すぎて @sawaki_kyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ