第42話 最期のざまぁ!

「んん?」


 この段階で無駄に目覚めを迎えたバカ息子に余ができることは……


「ほわちゃーーーーーーー!!!!!」

「ふごぉぉぉぉおおぉぉおおお」


 殴り飛ばしてもう一度深い眠りにつかせることくらいじゃな。



「へっ、陛下!?」

「ん? ここは?」

 騎士団長ベルオールと魔導師団長ラグルも目を覚ましたようだ。



「お前たち、無事であったな。結構じゃ」

「「はっ、お役に立てず、申し訳ございません」」

「うむ。今後は励むように」

 いかついおっさん2人に揃ってしおらしくされてもこれっぽっちも嬉しくないが、示しは必要じゃろうから余は厳しい顔はしつつも鷹揚に頷きを返した。





「アリア様、本当に大丈夫ですか? そのお怪我はないようですが……」

「私は大丈夫ですわ、アーサー様。レアルセイア様は恐らくしばらく前から様子を見られていたのだと思います。今思えば、聖女の力を自然に使えたのはそのせいだと思います。ご心配をおかけしましたが」

「良いんだよ……アリア。君が無事なら。本当に良かった」

「アーサー様」

 お互いを心配し合い、無事を喜んで抱き合う若い2人の姿は眩い。

 カイラスレーヴェンに無理やり体を操られ、あと一歩で魔王を召喚しかけたのじゃ。そして実際に召喚自体は成功させた。


 さすがアリア殿じゃ。

 しかもそれは神の意思を受けてのことじゃったと言うのか?

 もう少し早く教えてくれたら、あのように余も悩むことはなかったのじゃが、あの時にはまだアリア殿も気付いていなかったのじゃろうな。仕方がない。


 などと考えている間もずっと抱き合ったままの2人。まさかとは思ったが衆目の面前で接吻には至らず、しかし長い長い……とっても長い抱擁が終わらぬ……。いつまでやっとるんじゃ!!!!


 羨ましい……じゃなかった、皆が見ておるのじゃぞ!?


 それに、なぜ余の周りにはおっさんが2人なのじゃ!?

 余にも少しくらいは潤いを……などと言ってしまっては子供たちにも家臣たちにもひかれるから言わぬが、ちょっとぐらい余だって良い思いをしてもいいのではないじゃろうか?


 いや、王妃を求めているわけではない。

 むしろあいつは一生謹慎でよい。


 くそぅ、アーサーめ!

 鼻の下を伸ばし……なんてことは一切なく、ただただ真摯にアリア殿の無事を喜ぶ姿にあの時、アリア殿を斬るようなことをしなくて本当に良かったと思う。


 もし刃を立てていたとして、それが通ったとは思えんがのぅ。

 危うく余が神敵になってしまったかもしれぬのでな。







 そして……。


 アーサーとアリア殿を部屋に返し、この場の片づけ……はレアルセイア様の魔法で全て完了しているため、余は誰もいなくなった広間……いや、隅の方で騎士団長が待機しておる……で待った。



 バカの目覚めを……。




「んん?」


 あまりに長いゆえ、持ってこさせた軽食とワインを採り、昼寝をし、政務を行い、今回の事件に関する処罰を決め、大臣や騎士団、魔導師団に指示を出した後。


 さらに数時間が経過した真夜中。


 ようやく目覚めおったわ、このバカ息子が!?


「なっ、お前は!?」

 そんな余に気付き、慌てて体を起こして怒り顔になるバカ息子……いや、エリオット。


 本当に困ったものじゃのう。

 なにせこのバカはきっと何も覚えていない。何も知らない。だとしたら言い出すことも簡単に予想がつく。


「ミラベルをどこにやった!? お前が虐めたんだろう!?」


 そっちか……。


 思わず天を仰いだ余は決して悪くない。


 まさかあれだけのことを起こしておいて、謝罪もなく、後悔もなく、ただ女の尻を追いかけておっただけとは情けない。


 もう殴る気力も湧いて来ない。


 どうしてここまで突き抜けたバカになってしまったのじゃ。



「その娘は王城で暴れたのじゃ。謹慎を言い渡しておったにも関わらずのぅ」

「それがどうした!? そんなぶほぉぉぉぉぉぉ」


 やはり殴らんとダメじゃな。

 欠片も理を理解しないとは。


「謹慎を破り、王城で暴れるなど言語道断。その娘は処刑されるよりも重い罰が待っておる」

「なっ!?」

「それから改めて王妃、グレアナルド公爵、レオメット侯爵など、お前がしでかした婚約破棄および王城破壊事件に関与した者たちは軒並み処罰することが決まっておる。覚悟しろ、エリオット。もうお前を甘やかし、好き放題させてくれるものはおらぬ。お前自身もミラベルと共に罰を受けるがいい」

「なっ……」


 なぜこのようなマヌケ面で驚けるのかが不思議で仕方がないのぅ。

 当然じゃろうに。


 むしろ寛大な処置ではないだろうか?

 神が降臨した地で即座に血なまぐさいことをするのは避けるべきじゃ。


 だからこそ皆、爵位剥奪などで済ませておる。



「まぁ、一つだけ感謝してもらいたい。なにせ、お前とミラベルの結婚だけは認めてやろう」

「なんだと?」

 不思議そうな顔じゃのう。

 なぜ認めるかがわからぬのじゃろうか?

 わからぬじゃろうな。


「なに、王家にあのような汚らわしい娘は入れぬ」

「汚らわしいのはお前だ!!! ふごぉぉぉぉおおぉぉおおお」

 いつものことながら学習しないエリオットがいきなり襲い掛かって来たので殴って地面にたたきつけた。


「黙って聞け。あの娘は爵位を剥奪した上でお前と結婚させ、刑に処する」

「ぐっ……」

 もう一度キレるかと思ったが、殴られ続けて少しは学習したのか、睨みつけてくるだけに留まった。


 学習した……だと?

 どうでもいいが。


「お前もミラベルと婚姻を結んだ直後に王族としての身分を剥奪し、刑に処する。まぁ励め。真面目にやっていれば解き放たれる可能性もなくはない」

「ぐぅ……」

 刑とやらはあえてもったいぶってまだ教えんぞ?

 だが、愛すべき女性と一緒なのじゃ。喜ぶと良い。


「刑の内容はカイラスレーヴェンの世話じゃがな」

「なぁ!?」


 神の命令を受けたカイラスレーヴェンは口数少なく回廊に籠っていった。

 そんなカイラスレーヴェンの世話。何をすればいいのか全く分からぬが、身動き取れなくなった竜とはいえ、食事は魔力、そして魔物じゃから取って来いとかじゃろうか?



 いつぞやか言っておった淀みを祓うという魔法で頼むぞ?

 できなかったら餌が貰えないカイラスレーヴェンが怒ってお前たちを襲うかもしれぬが、何とか頑張れよ。



「竜の世話なんかできるか!?!?」

「できるできないじゃないのじゃ。これは神の命令。やるのじゃ」

「くっそ~~~~~~~」

「あとは余のうっ憤を晴らすための余による一撃を喰らえ!!!」

「なっ!?」

「おやめください国王陛下!!!」

「えぇい、止めるな騎士団長! エリオットよ! 貴様がばかをやったことによる家族の悲しみを思い知れぇぇぇぇぇえええぇぇぇえぇええええ!!!!」

「うぎゃ~~~~~~~~~」


 パリーーーーーーン!!!!!!!


 あっ、まずい……。



 刑の前なのにお星さまにしてしもうた……。

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