第26話 黒い何かをフルボッコ!②

「危ないのじゃ!!!!」

「えっ?」

「陛下!?」


 黒い何かは一瞬にして膨れ上がると、アリア殿とアーサーに向かって伸びていったので、阻止するために走った。


 今思えば国王として自らやるべきではなかったと思うが、突然のことに思いのほか速く走った余の足を褒めてやろうかのぅ。


 なんとか間に合い、アリア殿とアーサーを突き飛ばした。

 もちろん女性を……それも聖女たるアリア殿を突き飛ばすような真似をしたことは申し訳ないが、そこは機敏な動きを発揮してアーサーが庇うと信じておるゆえ、問題はないはずじゃ。


『グルルルルォォォオオォォオオオオオオ……』


 そして余は黒い何かに取り込まれたのじゃ……


『ペッ!』


 が、すぐに吐き出された……。




 なんじゃその『まっずーーーー』みたいな反応は!?


 余は国王じゃぞ!?

 この国で一番偉いんじゃぞ!?


 もし余を捕らえて身代金でも要求すれば、きっと可能な限り支払うはずじゃぞ、アーサーが!!!


 なのに、『いらね』みたいな感じで吐きだすとは何事じゃ!?



 ただ、そんなことに文句を言っている場合ではない。

 余を吐きだしたのは巨大になった黒い何か。



 つまり……



「落ちるぅぅぅううぅぅううううう~~~~~」


 空中に放り出された余はそのまま庭園の地面または舗装された大理石または整備された小石が敷き詰められた……


「陛下!」


 ような場所に落ちることはなく、アーサーが抱きとめてくれたのじゃ。

 持つべきものは良い息子じゃのぅ。


 アリア殿に怪我はないところを見るとアーサーはちゃんとアリア殿のことも助け、余のことも助けてくれたようじゃ。


 やるなおぬし……惚れてしまうじゃろ!





『グルルルル。邪魔ヲスルナ!』

「なに!?」


 余がせっかく家族との親愛を深めておるというのに、空気が読めぬ魔物じゃのう。

 成敗してくれる……アーサーとアリア殿が!


『ソノ娘ヲヨコセ! 我ラニハソノ娘ガ必要ナノダ!』

「なにを言っている! アリア様をお前のような化け物に渡すわけがないだろう!」

「そうですね。さすがにそんなお誘いは遠慮させていただきます」

「あたり前じゃ! そのようなこと、王国の威信にかけて許しはせぬ!」

 

 まったく。

 そもそも何の許可があって王城の庭園に足を踏み入れておるのじゃ!?


「そもそも貴様はなんじゃ!?」

『ドウセ死ヌ者ニ話ス必要ハナイガ、イイダロウ。教エテヤロウ。我ハ……』

『"神に歯向かいし者の一撃"!』

「「「なっ???」」」

『グルルルルォォォオオォォオオオオオオ!?』


 そこに白濁した巨大な斬撃が降って来て、黒い魔物を真っ二つに斬り裂いた……というか、斬り裂きおった。


「なにをしておるカイラスレーヴェン!?」


 なぜ竜の姿をさらけ出して戦おうとしておるのじゃ!?

 アリア殿とアーサーも驚いてしまっている……と思ったが、冷静に使用人や衛兵たちを逃がすように騎士団と魔導師団員に指示を出しているな。

 良い仕事じゃ!


『ふん。こんな出来損ないの魔物……我が破壊してやろう!』

 だが、カイラスレーヴェンが次の攻撃に移ろうとしている。


「待て! こやつには何をしておるのか聞きださねば!」

『必要ない! こいつが出てきたということは仇敵・ヴェルガノシウスのせいに決まっている! こいつが無意味に淀みをまき散らしてここをダメにする前に消せ!』

「ヴェルガノシウスだと?」



 なんじゃそれは?



『知らぬのか? まぁ我らの存在理由すら知らなかった無知な貴様では仕方がないか』


 うるさいぞ。それは教えなかった両親とお前のせいであって、余のせいではない!

 なのに、見下すような視線を送りおって。焼いてくれる……。


『待て! 教える! 教えるから待て! まずはあれを倒してからきっちりしっかりちゃんと教えるから!!!』

「早くしろ」

『消えよ、グランドレーザー!!!!』

『グルルルルォォォ!? フザケルナ! 邪魔ヲスルナ、カイラスレーヴェン! アノ娘サエ喰エバ、我ハコノ地上デハ無敵! モウ誰ニモ負ケルコトハナクナルノダ!!!』


 カイラスレーヴェンが放った極太な光線が魔物に突き刺さる。

 おぉ、これはやったのではないか?

 最初からやれ!


「アリア様を喰わせるなんて、許すわけがないだろ? 死ね! セイクリッドサンダースラッァァアアァアアアアッッッッシュ!!!!!!」


 そこにアーサーがこれまた極太の斬撃を叩きこんだ。


 お前、強くなったな。

 どこかのバカな王子と違って、お前を叩き直すのは余では無理なようじゃ。

 叩き直す必要性を今のところ感じぬが……。


『グルルルルォォォオオォォオオオオオオ!!!!!!? 許サン! 許サンゾォォォオォォォオオオオオオ!!!!』


 アーサーの攻撃が叩きこまれ、黒い魔物がその姿を保っていられなくなったのか、溶け出していくかのようにグネグネぐちゃぐちゃになっていく。


「アーサー様。カイラスレーヴェン様。あとはお任せください。"聖なる光による癒し"」

『……』


 そしてアリア殿の力で魔物は消えていき……




「これは?」

「誰ですか?」

「エスメラーダ子爵じゃのう……」 

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