第15話 国王様のターン③エリオット王子の受難(苦笑)

□エリオット

 なぜ第一王子であるこの俺がこんな辛気臭い部屋に閉じ込められなければならないのだ?

 父上は何を考えている?


 なぜアリアなどを優先するのだ?

 どこにでもいる程度の女だろう?

 

 聖女?

 だから言っただろ。せいぜい経験が多いだけで、ミラベルにだって既に淀みは祓えるんだ。練習していけばできるようになる。


 それをさせずに無理と断じるのは不当だ。


 しかも、それで俺を責めるなど、本末転倒もいいところだ。


 そもそも父上は間違っている。

 帝国軍に対して有効な対策が取れなかった騎士団や魔導師団、そしてアーサーこそが責められるべきだ。


 だからこそ、今後はさらに貴族の強化に努め、彼らの力を補強すべきだ。

 そんな強い貴族に囲まれた国王こそ国の象徴であり、未来永劫に渡って強き王として君臨すべきものだ。そうすれば自ずと帝国などに後れを取ることなどなくなるのだ。


 そして、神殿ひいては聖女は国が管理すべきだ。

 なぜ国王からしてお願いをするという体なのだ。

 国王の方が上だとはっきりとわからせた上で、従わせるべきだ。


 そうすれば淀みを消すための部隊も作れるし、無駄に魔導師団を動かす必要すらなくなる。


 ここまでやって初めて未来は明るいと言える。

 にもかかわらず、清貧とは言わないまでも質実剛健などという言葉を持ち出して貴族を弱めようとするなど、父上は間違っている。


 実際、貴族たちからの反発は強い。

 今は戦争が終わったばかりだから皆、遠慮しているかもしれないが、いつまでもこのままではいないだろう。


 仮に大臣を務めるような貴族が全員離反するようなことがあったらどうするのだ?


 騎士団長と魔導師団長だけを残しても国は回らない。


 そういったことが父上にはわかっていない。

 僕のように、きちんと大貴族たちから学ぶべきだ。


 だからこそ僕は貴族たちと良好な関係を築いているのだぞ?

 それに加えて騎士団長と魔導師団長の息子たちですら僕の取り巻きに加わっている。考えうる限り最良の交友関係を築いたと言えるだろう。


 なのに、そんな僕に対するこの仕打ち。


 もし僕を放逐なんかしてみろ?

 この王家は滅ぶぞ!?


 もちろん、貴族たちが黙っていないだろう。

 僕は彼らと取引をし、将来優遇してやることを条件に支援を引き出したのだから。


 仮に今僕が倒れたら彼らは支援し損になる。

 そんなことは政治と駆け引きが信条の貴族たちが許さないだろう。





 と思っていたのに、なぜだ。



 なぜ誰も助けに来ない。


 ずっと閉じ込められていて数えてもいないが、かなりの時間が過ぎたというのに、なぜ母上すら来ない。


 まさか父上が強情を張っているのか?

 それともまさかアーサーのやつが僕の権限を奪って我が物顔で闊歩しているのか?


 許せん……。


 アリアなどを持ち上げ、僕を下げるなんて、そんなことはあってはならないんだから!






「少しは反省したのか?」


 それからしばらくした後、やってきたのは父だった。

 だが、意味が分からない。


 何を反省するというんだ。


 むしろお前が反省しろ。

 優秀で国の行く末を憂う僕を蔑ろにしたことを。


「その眼……恐らくなにもわかっとらんのだな……。嘆かわしいことじゃ」

「なにが、嘆かわしいものか!? 嘆かわしいのは未来を憂う僕をこんな場所に閉じ込め、本来優遇されるべき貴族を蔑ろにしている、あなただ!」

「……まったく、誰に教育されたのじゃ……」

 そんな悲しそうな目をするな!

 お前にそんな目をされる筋合いはない!


「すでにお前は廃嫡となった。当然じゃな。救国の英雄であるアリア殿の配偶者になること。これだけが唯一、お前が国王になる道じゃったのに。自らの手で捨て去ったのじゃから」

「なにを!?」

 まだそんなことを言うのか。

 そんな発言、誰が納得するというのか?


 レオメット侯爵家の出身とはいえ、卑しい母親から生まれた娘だぞ?

 そんな女を王妃だなどと呼ばせられる貴族の反感を考えたことがないのか?


 神殿によって作為的に育てられただけの女だぞ?

 ちょっと才能があれば誰にでもできることを、仰々しく喧伝し、唯一無二であるなどとのたまい、挙句の果てに国への協力を出し渋るようなものが、国母たる王妃に相応しいわけがないだろう!


 そんな思い上がりを許すから、アリアも神殿もつけあがるのだ!


 俺が目指した通り、ミラベルを王妃に据えればそんなことは起きない。

 

 神殿は権威性を失い、従順になるだろう。

 下級貴族の娘では難しいかもしれないが、ミラベルの本当の素性はアーバンクラーツ公爵の娘だ。調査でわかったことだ。既に亡き公爵も認めていたことだ。


 俺が即位した暁にはそのことを公にすれば貴族たちはむしろ感激しながら従うだろう。


 なにせ帝国による悲劇の主人公たるアーバンクラーツ公爵だ。


 勇敢にも先陣を切り、残念ながら負けた。

 負けたが、あれは国王たる父上の命令が遅かったからだ。


 勇敢に戦いを挑んだものの周囲を帝国軍に囲まれてしまった公爵を救うため、騎士団を突撃させるべきだった。

 騎士たちの命なんかどうだっていいだろう?


 大貴族で勇敢な公爵をこそ救うべきだった。

 思えば、帝国との戦いでは初手から最後まで父上は間違い続けたのだ。


 こんなやつが国王では将来がない。






 だから……




「うぐっ……」


「まったく。国王としての当然のたしなみとして肉体を鍛え魔法も使える余が、聞けばずっと遊んできたらしいそなたに負けると思うのか? それほどまでにバカなのか?」


 なんだと……。


「まぁいい。反省を強いるには、力を示すことも必要じゃ。親として、不肖な息子への制裁くらいはきっちりつけねば、周囲に申し訳が立たんから覚悟しろこのバカ息子が!!!!!!!!」



「ほげぇぇぇぇえええぇぇぇえええええええええ……」




 

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