第32話
◽︎
そうして、私は今、意を決して営業サポート課の前に立っている。
「こ、この発注お願いできますか…!!」
1番端に座って作業をしていた男性にそう話しかけた。初陣のような気持ちになって、言葉にも力があまりにこもる。
「はい、急ぎですか?」
「あ、いえ、でも今週中にはお願いしたいです。」
「了解です。」
凄く気合を入れてお願いしに行ったから、あっさりとサポート課の人がOKしてその書類を預かってくれてしまって、ちょっと拍子抜けした。
だけど、とても助かる。
朝から営業に行って、午後帰ってきてからこの仕事が残っているのと無いのでは、随分違う。
感謝の意味を込めて、私はペコリと一礼してそのまま外回りへ向かった。
__それから午後。
結局ミツがニヤニヤしながら作ってくれたお弁当はきちんと車の中で食べて、再び会社へ戻って今日の取引先の状況をまとめたり、メールチェックをしていた時だった。
「江渡 有宇さん!いますか!?」
「はい!?」
ハキハキと凛とした声に急に呼ばれて、油断していた私は呼応するように、思わず立ち上がって大きな声で返事をする。
すると、綺麗な髪をさらりとなびかせながらスタスタ足早に進んでくる女の人。
それを呆然と見つめていると、私のデスクまであっという間にやってきた彼女は、
「これ、江渡さんが出した?」
そう言って、書類をずい、と私の前に見せる。
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