第19話
◽︎
「……なんだこの資料は?」
「取引先へのPRイベントの企画資料です。」
「誰がこんなこと頼んだ?」
「…先週、部長が作るよう仰ってたと思いますが…」
「それよりここへの新しい商品の営業交渉は進んでるのか。」
「…勿論連絡はしましたが、向こうの担当者も迷っているようですので、また改めて直接会ってお話をしたいと、」
「何年この仕事やってる?
イエスを引き出せるようなコンタクトの取り方をいつもしろと言ってるよな。」
ピンと、細い糸が限界まで苦しいほどに引き延ばされて、もう、千切れてしまいそう。
そんな張り詰めた空間の中で、うちの営業二課のみんなが黙々とパソコンのキーボードを打つ音が無情に響く。
部長と話をしているのは、私の3つ上の先輩の
どうしてだか分からない。
部長は何故か、彼に対する当たりがあまりにきつい。
もしかしたらそこに理由なんて無いのかもしれない。
側から聞いていても、「そんなの理不尽だよ。」そう思う瞬間だって沢山ある。
怒鳴るでもなく、罵声を浴びせるでも無い。
だけど、ただひたすらに氷のように冷たいトーンの声と言葉で責め立てられるそれは、その会話を聞いてる私を含め他のみんなを萎縮させる。
萎縮していくのは体だけじゃ無い。
心も、なんだ。
それでも何も言えない私もみんなも、2人の様子を気にはしながら、自分自身が沢山抱える仕事をこなさなければならない。
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