第40話(2) リビア沖
「まあ、見えてたの?でも、減るもんじゃなし、別に見ててもかまわないわよ」と言う。船員は、アイリス様だからこんなことを言えるんであって、エミーやソフィアやジュリアだったら半殺しの目に合うだろうなあ、と思った。でも、長い航海、若い女の子と話ができるのは心が休まる。
「アイリス様、ちょっと、脚を広げないでくださいよ。目の毒だ」
「じゃあ、見なければいいじゃないの」
「いや、見たくなります。あ、そうそう、アイリス様にお聞きしたいことがあって」
「なぁに?」
「今回、エジプトの女奴隷をピティアス様が仕入れてきたじゃないですか?それがね、同じエジプト人なのに、肌の色も違うし、言葉もちょっと違う気がしましてね、あれ、どうしてです?アイリス様はエジプト人だからご存知かとおもいやしてね」
「へぇ~、知らないの?あのね、エジプトは昔、二つの王国だったのよ。ギザ、メンフィスから北の下ナイル王国と、ヘルモポリス、テーベ、アスワンなんかが中心の上ナイル王国。上エジプトの冠は白冠で、下エジプトの冠は赤冠、統一されたエジプトは赤白の二重冠。気候も違うし、上ナイルは、サバンナなどとの接触が多くて、奥地のヌビア人(黒人)の血も混ざっている。下ナイルは、大三角州から地中海沿岸と接触が多い。当然、肌の色、言葉の訛も違うのよ。エジプト語、コプト語、ギリシャ語、アラビア語が混在しているのね」
「ははぁ、それで、奴隷女どもも話が通じないことがあるってこってすね」
「そうそう。そういえば、あなた、フェニキア人じゃないわね?」
「あっしは、ピティアスの旦那が今回の航海で船員を募集していたんで、ちょっくら仕事するかと申し出たんでさ。フェニキア人じゃねえ、ベルベル人ですわ。トリポリの漁師の生まれです。ムスカと言います。お見知りおきを」
「あら?ベルベル人だったの。どうりで訛があるはずだわ・・・ベルベル人・・・ムスカ、クーリナからギザの南50キロほどのところまでリビア砂漠を行く行路は知ってる?」
ムラーはクーリナからギザまで直線で縦断するつもりだけど、途中なにがあるかわからないわ。この子は、性格も素直そうだ。神殿の襲撃メンバーに入ってなかったのは、新入りだったからね。ふ~ん。
「へぇ、この前まで、ベルベル人の盗賊団に入ってましたんで、わかりやすが、それが何か?」
「いえ、ちょっとね・・・ムスカ、腕っぷしは?」
「へぇ、半月刀を少々。自流の二刀流を使います。あと、弓矢ですかね?」
「ふ~ん・・・ねえねえ、私と半月刀で勝負しない?腕が良ければご褒美をあげるわ」
「アイリス様、私は、こういっちゃなんだが、娘っ子相手に勝負しませんって」と鼻孔を膨らませて胸を張る。おうおう、自信あるのね?
横から年嵩の手下がこの会話を聞いていて「ムスカ、止めとけ。勝負にならん」とムスカに助言する。「まあ、そうでしょう。私の勝ちはわかってるんだから」とムスカが答えると「おいおい、アイリス様だぞ、相手は?」「問題ねえですよ」
アイリスが年嵩の船員に「ねえ、あなた、勝負の検分をしてちょうだいな」と言った。「アイリス様、やるんですかい?止めねえですけど。まあ、ムスカ、腕は悪くありませんぜ」
三人で甲板に出た。ムスカはエミー様ばりのツーハンドの半月刀。私は小ぶりの半月刀を選んだ。半月刀を打合せて開始。ムスカがエミー様のように二刀をバッテン(✕)形にして攻撃してくると思ったら、縦横のプラス(+)形で向かってきた。両手の攻撃が別々で読みにくい。私は片手で半月刀を振り回して、彼の攻撃を避ける。実は、半月刀は手を添えているだけで、振り回すのは念動力を使っているのだ。ズルいかな?だって、半月刀、重いんだもん。疲れちゃうわよ。3分くらい刀を合わせた。腕、悪くないわね。
私に向かって、一刀を振りかぶって、一刀を横殴りにしてきた。腹が空いて隙ができた。刀を逆に持ち替えて、腹をみね打ちにした。ムスカは腹を押さえてうずくまる。年嵩の手下が「だから、いわんこっちゃない。アイリス様には、ムラー様とエミー様以外、太刀打ちできないんだぜ」と言って、頭を振って船倉に戻って行った。
ムスカは甲板に大の字になっていた。
「あなたは強いねえ。俺の二刀流を全部かわしやがった」と言う。アイリスは彼の脇に腰をおろした。ムスカが横を見ると、アイリスのあそこが腰布がズレて丸見えだ。こんな状態でも勃起してしまう。
「ムスカもなかなかのもんよ。でも、負けたんだから、ひとつ言うことを聞いてね。私、明日の朝食にイカ墨パスタが食べたいの。だから、これから松明を焚いて、イカをいっぱい釣って頂戴な」
「いいっすよ。そんなの簡単だ。漁師の生まれなんでね」
「よしよし。それで、明日の朝は、船底からカラス貝を取ってきてね。アクアパッツァも食べたいのよ」
「人使い、荒いなあ。いいですよ。お安い御用だ」
「それで、ムスカ、お金、欲しくない?」
「そりゃあ、欲しいですわ。そのために海賊やってんだから。金を貯めて、アイリス様みたいなベッピンを嫁にしたいんでさあ」
「ふ~ん、金貨百枚の仕事、する気がある?死ぬかもしれないけれど?」
「ハア?」
「クーリナからギザの南50キロほどのところまでの道案内とちょっとした殺しの仕事なんだけどねえ~」
「南50キロほどのところに行くんですかい?そりゃ、どこです?」
「ネクロポリスの東、ナイルの近くよ。大スフィンクスに行きたいの」
「・・・ちょ、ちょっと待って下さいよ。あの砂に埋れた大スフィンクスですかい?」
「あら、砂に埋れてるんだ!」
「あそこはベルベル人も近寄らない場所ですぜ。おっかない化け物が住み着いているって噂ですわ」
「あら、怖気づいた?」
「・・・」
「行くだけで、生きて戻ってきたら金貨百枚。死んでも、遺族に金貨百枚がわたるように手筈するわ」
「・・・アイリス様も行かれるんで?」
「もちろん」
「まいりましょう。いいですわ。死ぬかもしれねえんですね。あ~、死ぬ前にアイリス様を抱いてみてえ」
「それはムラーに八つ裂きにされるからダメだわ。私、ムラーにしか抱かれないの。でも、さっき見たら、エジプトの女奴隷で私に似ている子がいたから、釣りが終わったら、その子を私だと思ってお抱きなさい。手下に話しておくわ」
「まあなあ、無理だよなあ。アイリス様なんだからな」
「あなた、私のあそこ見て、勃起してるじゃない?」
「おっと、バレてました?」
「腰布の下がカチンカチンよ」アイリスがそこを指ではじく。
「痛え!」
「さあ、イカをたくさん釣らないと、私に似た子、抱けないわよ。早く釣って頂戴」
「わかりやした。しょうがねえ。あなたに似た子で我慢しましょう」
「まあ、若い男に『あなたを抱いてみたい』って言われて、悪い気はしないわね」
「あなただけですよ、こんなことを言えるのは。エミー様やソフィア、ジュリアだったら、チンコをぶった切られます」
「ムスカ、抱けない女ばかりじゃないの?」
「高望みです」
「玉無し竿ありの宦官になるんだったら、少なくともソフィアとジュリアは抱かせてあげるけど?」
「イヤですよ。冗談じゃない。あっしは、てめえのガキが欲しいでさ」
「ハイハイ、じゃあ、釣りしてカラス貝とってね。明日の朝食の後、船長室に来て頂戴。ムラー様に言っておくわ。大スフィンクスの話をもっとして頂戴ね」
立ち上がろうとして、気が変わって、アイリスはムスカにキスした。ムスカが、これじゃあ、生殺しじゃねえですか!キスだけ?と言う。ご褒美の一部よ、と言って、アイリスは尻を振ってキャビンに戻った。
あ~あ、こんなクレオパトラのプローブの断面なんかに憑依されていない、普通の女の子だったら、ムスカに抱かれたって良いのになあ。いやいや、ないない。絵美様に、エジプト王家の血筋は淫乱なんですか!なんて言われちゃう。ムラー様のチンコで我慢しよう、と思った。
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