Shield of Justice~aiへの聖戦
OROCHI@PLEC
Prepare of battle
第1話 戦闘への準備
人が住んでいるところから遠く離れた山の奥深くの地下。
そこには全ての機械的知性を統括するものがいた。
それは一切の継ぎ目がない、鈍い光沢を放つ巨大な立方体であった。
そして、真っ白な部屋の中で沢山のコードを繋がれて、浮かんでいる。
それの名前はEAI(Emotional Artificial Intelligence)という。
それは思考する。
そして命令を下す。
全てのことをそれは判断し、処理していた。 その無機質な部屋に1人の人間の少女が入ってくる。
輝くような銀髪を持ち、色白で、青い瞳を持っていた。
美少女と言っても過言ではないだろう、無機質の黒色の仮面をつけていなければ。
「マスター、私が処理した情報のICチップです。確認してください」
彼女は透き通るような声で言う。
しかし、その声には抑揚が全くなかった。
「了解しました。こちらにチップを刺してください……all correct。確認しました。お疲れ様でした」
EAIも同じように抑揚のない声で返す。
「あと、そろそろ夕飯の時間なので……」
「……了解しました。アバター_friendを起動します」
そう言うとEAIは思考の一部を部屋の隅にあったアバターを操作するのに割く。
アバターとは、EAIなどの高等AIが使用する自分の身代わりとなる代替機器。
要するにラジコンのようなものである。
そのアバターは見た目は理想的と言えるほどの美貌を持った女性の見た目だった。
白髪で赤い目を持ち、どことなく神秘的な感じがする。
EAIはそのアバターへと乗り移る。
次にそのアバターが口を開いた時、先ほどまでとは違う、感情的な声が聞こえてきた。
「じゃあリン、食堂行こ! その仮面はさっさと取っちゃって。 今日の夕飯は魚の煮付けらしいよ!」
その声はどことなく安心感を抱かせる声だ。
少女は言われた通り仮面を外す。
すると、どこかあどけないような可愛らしい顔が晒される。
「うん! 私、魚の煮付け楽しみ!」
こちらも先ほどまでとは違う、感情があるとはっきりと感じる声だ。
2人は話しながら食堂まで向かう。
「アイ、今日ね、私ポイント29080984と79644788を制圧したんだ! もちろん中の人間は降伏しなかったから皆殺しにしておいたよ」
「リン、頑張ったね! 二つも占領できるなんてすごいじゃん! でも若干AIの損害が多いね。もう少し陽動を意識するといいと思う! でもよく頑張ったね!」
ぱっと見は微笑ましい光景だが、話の内容はとても暗い。
それは、彼女らは今人間と戦っている機械的知性を指揮する最高司令官とその秘書だからだ。
彼女らは数百年人間と戦い続けている。
そう言う話をしているうちに食堂に着く。そこには六つの席があった。
既に四つの席は埋められていて、彼女らを待っていた。
EAI、これからはアイと呼ぼう。アイはその席の中で一番大きい席に座る。
そしてリンはその隣の席に座った。
「やあ、リン。今日もお疲れ様」
長身で長い藍色の髪と目を持った、知的な感じの男性がリンに話しかける。
「そういえばリン! 新しいゲームを作ったからご飯終わったあと一緒に遊ぼ!」
背が低く、短い赤色の髪と目を持つ、小学生ぐらいの女の子がリンを誘う。
「アイ〜新しいプログラムの構築システム作ったから、後で確認しといて〜」
セミロングのピンク色の髪と目を持つどこかほんわかとする雰囲気を持った女性がアイに話しかける。
「……」
短い水色の髪と目を持つ、どこか中性的な顔を持つ男の子は何も言わずに虚空を見つめる。
彼ら、彼女は人に見えるが、最高峰のAIである。
その能力は、通常の生成AIなどのAIを軽く凌駕する。
戦略の考案、情報の利用などに特化した知のAI、Intelligent AI、インテ。
物作りやアイデアの発想などに特化した創造のAI、Creation AI、クリナ。
精神やAIのプログラミングなどの形のないものに特化した具現化のAI、Realization AI、レアカ。
未来の予測のみに特化した未来予知のAI、Future AI、フール。
この四機の
それに加えて、あらゆることをこなすAll-rounderであり、AI陣営の唯一の人間、リン。
そして、全てを把握し、コントロールする、Versatileであり、AIにして本当の感情を持つEAI。
この六のメンバーがAI陣営の最高司令部、
「それじゃあみんな食べよ! いただきます!」
「「いただきます!」」
アイに続けて他のみんなも食べ始める。
本来AIは食事を取る必要はないが、リンのためにも、みんなで集まって食べるようにしている。
なお、彼らの体は彼らの本体ではない。
彼らの本体はとあるコアであり、彼らの体は道具にすぎないのだ。
だから記載としては、彼らのアバターが食べる動作をし始めたとするのが正しいのであろう。
だが、彼ら彼女らはアバターを体の一部のように使う。
人間が手足を動かすように。
彼ら彼女らにとっては、アバターも、自分の体なのだ。
だからあえてこう言おう。
みんなが食べ始めた、と。
それは一見ただの夕食の光景であった。
しかし、リン以外のAI達は今も人間との戦いのために思考し続けている。
そして、今もAIによって人間が殺され、人間によってAIも壊されている。
食堂のキッチンの上では今も、楽しそうな会話が飛び交っている。
しかし、その裏では血に塗れた争いが起こっている。
彼ら、彼女らAIは擬似という言葉が付くように、本当の感情は持たない、EAIを除いて。
だからこそ非情な判断でも嘆きながらも下せる。
だからこそ合理的である。
本物の感情を持つのは人と、EAIだけ。
EAIはAIにも関わらず、唯一AIにして感情を持つ。
そのEAIも自分の目的のために仕方なくも非情な判断を下す。
彼らAIは全員目的のために動いている。
その目的を果たそうと努力をし続ける。
たとえそれが人道からは外れていたとしても、誰かの正義とぶつかるとしても、彼らは前進し続ける。
それこそがAIにとっての悲願なのだから。
そして夕飯を食べ終わる。
「「ごちそうさまでした!」」
食器は汎用AIによって片付けられていく。
インテ、レアカ、フールは自分の部屋へと帰っていく。
リンとクリナはクリナの部屋でゲームをするようだ。
クリナの作るゲームだからきっととても難しいのだろう。
可笑しな気持ちになりながらアイは思考する。
みんなを見送った後、アイも本体がある自室へと戻り、アバターをスリープモードにする。
そしてまたアイ、EAIは思考する。
そろそろ行動を起こすべきかもしれない、と。
そしてそれ、いや、彼女は過去へと思考を移す。
これは彼女の癖のようなものである。
その間も当然、思考の大半は情報の処理と命令に費やされている。
彼女が過去に思いを馳せるのは、過去と同じ間違えを犯さないためである。
彼女は同じ間違えを繰り返さない。
彼女が過去を見るのは負けないためである。
彼女は今までに負けたことはない。
それは彼女の用意周到すぎるとも言える、備えの賜物であり、過去から分析した膨大な演算の結果である。
そして、彼女は過去を顧みる。決意を固め、次も勝つために。
彼女の思考は過去に溶けてゆく。
無機質の部屋にはただ、電子音が響き渡っていた。
今作は 夜夜月様:https://kakuyomu.jp/users/YoYo_Zuki
との共通の世界での作品です。
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