化け狐
ブルコン
化け狐
車の音が鳴る。
ブーン、と。
夜道の中での唯一の安心材料と言っても過言では無いだろう。
静寂はとても怖いから。
寂しいから。
だからこそ音があるということは安心できる。
孤独ではなく、自分が数多ある存在の一つなのだと認識できるのだから。
それが私の人生で学んだ
教訓であり、
哲学であり、
真理である。
でも、それらが崩されそうになっている。
コン、コン、コン。
狐の鳴き声ではない。
狐は女性の金切り声に似た声で鳴くはずだ。
じゃあ、何の鳴き声なのだろうか?
コン、コン、コン、コン、コン。
分からない。
分からない。
分からない。
空回りして響いているような、
どこか抜けているような、
何も無いような、
空虚で、
無意味であって、
有意義ではないからこそ、
最後は元に戻っているような、
そんな音。
それが怖い。
だからこそ「知りたいの?」
背後から、
鼓膜が震えた。
脳が認識した。
飲み込んだ。
飲み干した。
言葉の意味を理解した。
後ろを振り向きたくて、
振り向きたくも無くて、
コン、コン、コン、コン、コン、コン、コン、コン。
思考が加速して、飽和して、崩壊して。
肉体が振動して、抑制して、反復して。
「だからなに?」
怖い。
そう。
ただ怖いのだ。
けれど、知りたい。
知ってしまいたい。
いっそのこと楽に成りたい。
「あぁっぁあああぁぁぁっぁあああぁぁあああっああぁぁああああ!!!!!!」
自分で音を鳴らして、振り向いた、いなかった。
何もいなかった。
誰もいなかった。
「ゑ?」
なんだ。
そうか。
そうだな。
本当にそうか。
そういうものだな。
そういうものであってほしいな。
前に首を戻す。
思わず目を手で塞ぐ。
夜道なのにやけに光がまぶしくて、
ブーン、という音が響いて…………………。
化け狐 ブルコン @cogitergosum11
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