第10話

姉ちゃんは翌朝には栞さんを見つけ出していた。

姉ちゃんの行動力は半端じゃない。

「綾伽さん、これは私の問題なんです。どうか放っておいてもらえませんか」

栞さんが姉ちゃんに言う。

「逢えなくなる可能性が高いのに逢わないのは貴女の自由よ。私は貴女に羽津稀ちゃんが貴女に逢いたいと言った事実を突きつけに来ただけ」

「だったらーー」

「貴女が逢いたくないなら聞かなかった事にすれば良いだけよ」

「ーーそれが出来たらどれだけ楽か」

「一緒に泣いてあげて」

「え?」

栞さんが姉ちゃんを見た。

驚いていたと言う。

「私達は羽津稀ちゃんと一緒に笑う事しか出来ない。でも貴女は羽津稀ちゃんと一緒に泣いて、彼女を抱きしめてあげる事が出来る」

姉ちゃんは続けた。

「時間をください」

栞さんはそう言ったらしい。

「ママも逢いたがってたから」

姉ちゃんのそう言って栞さんと別れたそうである。

姉ちゃんはメールでそれを知らせてくれた。

『必ず逢いに行くと思うわよ。信じて待ってなさい』

姉ちゃんはそう言い切る。

俺はこの話は羽津稀に知らせなかった。

「今頃何してんだろ」

羽津稀は溜息混じりに言う。

俺は何を言えば良いのかわからず黙ってしまった。

話す言葉が見つからない。

「窓伽には悪いけどこうゆう時ってお母さんに甘えたくなるものね」

羽津稀が言う。

「何処が俺に悪い話なんだよ。栞さんと羽津稀は2人で暮らして来たんだから離れて暮らすなんて考えないもんだろ。それが離れて暮らすどころか相手の居場所もわからないと来てるんだ。心配もしてるだろうけど不安で寂しいって感じなんじゃないの?」

俺は思った事をそのまま言葉にした。

「彼氏居るのにお母さんに甘えておかしくないかな」

羽津稀は続ける。

「何処がおかしいよ。おかしくねぇよ」

俺は言い切った。

「ありがと」

羽津稀は俺に礼を言う。

「俺に礼こそ要らねぇだろ」

俺は羽津稀を見た。

次の瞬間俺は驚く。

羽津稀が泣いていたからだ。

「逢いたいよ」

羽津稀は掛け布団で顔を隠している。

起き上がれなかったからだろうか。

そんな羽津稀を見たら俺は動かずにいられなかった。

「何処行くの?」

羽津稀が泣きはらした表情で俺を見る。

「栞さん、連れて来る」

俺は言い切った。

「何処に居るかわかるの?」

羽津稀が聞く。

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