第12話
「牛乳にチーズにパンにジャムですか」
クロハがフウの背後に立って呟く様に言う。
「他に食べ物を知らなくて」
フウは苦笑いした。
「農家?」
クロハにそう言われたフウは「下人です。奴隷とも言う様ですね」と余計に苦笑いする。
「フウ」
ホークがグラスを手にしてフウの傍に立ち止まった。
(?)
フウはホークを見る。
「乾杯」
そう言ってホークはフウのマグカップにグラスをあてた。
「ここに奴隷は居ないわ。居るのは城の主の私が居るだけであとは仲間よ。雇い主ではあるけど雇い主ってのは雇った存在には賃金を払う義務がある。奴隷が賃金を貰える?仲間の意味は理解してもらえるかしら。互いが互いを必要とするから私達はここに揃っている。生きる存在としての価値は皆同じよ。優劣は無いわ」
シルキィもフウに近付いて、彼のマグカップにワイングラスをあてる。
「かんぱ~い」
ミルキィもフウと乾杯した。
「宜しくな」
クロハも小さな杯をマグカップにあてる。
「はい」
フウは仲間として受け入れてくれるホーク達を喜んで受け入れた。
こうしてウィンズことフウの新たな人生がスタートする。
深夜、シルキィは真っ暗な部屋の中で紫に輝く石の前に揺り椅子に座って石をジッと見ていた。
その光の中にはあの炎の鳥が。
「セインティア十二世ねぇ。聖なる者と言う意味のその名を聖なる方から奪った報い、すぐに受ける事になるわよ。そんな事不安にも思っていないでしょうけど」
シルキィはクスクスと微笑う。
翌朝、ホークはシルキィ達の荷物のあまりの無さに驚かされた。
「トパーズだけか?」
ホークは確認する。
「そうよ。だって着替えもお金もこの石に望めば揃うんだもの。この城からわざわざ沢山の荷物を運ぶ必要は無いじゃない」
シルキィは笑った。
「で、この石を運ぶのが俺達?」
ホークは何故かクロハを見る。
「石運び兼警備」
クロハは言った。
「あ、そ」
ホークは何とも言いにくい表情をする。
「街の中を運ぶだけだ。面倒な事は無いだろうに」
クロハは不思議がった。
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