蘇える風
第7話
「まぁ、見事に笑わなくなったな。起きていても心ここに在らずだ」
ホークを見ていたイーヴィルクロウが言う。
いや、イーヴィルクロウことクロハがそう言った。
あれからシルキィ達は穏やかと言えば穏やかな時を過ごしていたのでイーヴィルクロウを本名で呼ぶ事にしよう。
実際雇い主のシルキィも彼をクロハと呼んでいた。
「ここは私と彼の二人だけにしてくれないかしら」
「御意」
シルキィに言われた通りクロハは彼女の部屋から消える。
「ねぇ、ホーク。貴方があのボーレスランドの怪物に突きつけた言葉。私が叶えられたら貴方は私を神と崇める?」
シルキィはベッドの上に人形の様に座ったままのホークにそっと寄り添った。
だがホークは全く反応しない。
「出来ない事は言うなって貴方の性格を知っていて言っているのよ。意味はわかる?」
シルキィはホークに寄り添って声をかけ続ける。
相変わらず反応の無いホーク。
痺れを切らしたのはシルキィが先だった。
シルキィは白い光と化してホークの中に消える。
『俺が俺でなくなった時点で俺は死んだも同然。それを永遠に生きるだと?だったらウィンズを生き返らせてみろ。いや、永遠が与えられているならば今すぐ笑わせてみやがれ。それが出来たら俺はてめぇを神と崇めよう』
ホークがボーレスランドの怪物に言った言葉はホークの心の中の世界で繰り返し反響していた。
『神なんぞ居ない!神が居るならば俺は存在する必要は無い!』
同時に響くホークの声。
ホークの精神世界に入り込んだシルキィはただ目を細める。
悲哀な空虚。
「貴方は蘇りたい?」
シルキィはいつの間にか後ろに立っていたウィンズに聞いた。
「彼は本当に私などの復活を望んでいるのでしょうか」
ウィンズは戸惑っているらしい。
困惑しているのが良くわかる。
「直に聞いたら?私は貴方に蘇る機会は与えたわ。後は彼がそれを望むかで貴方は蘇る」
そう言うとシルキィは姿を消した。
その場からホークを見ていたウィンズは暫くしてから彼に近付く。
「ホーク」
ウィンズからホークの名を呼んだ。
ホークはすぐにウィンズに気付く。
「ウィンズなのか?」
ホークは驚きを隠せない。
「はい、そうですと答えたら信じてくださいますか?」
ウィンズは哀しげにそうホークに尋ねた。
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