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第1話

いつからだろう。

この街は荒れ果てていた。

格差が激しく、貧困者は食事をするのもやっと。

そんな街であらゆる場所から出血し、死に至るウイルスが蔓延した。

死者が一万人を超す頃、この街にはベルゼブルと名乗る存在が現れていた。

彼だけがウイルスを殺せると何処からか噂が広まり、彼は神と呼ばれる様になる。

彼を崇める者達は聖なる祈りを教える宗教として聖祈教(せいききょう)を作り出した。

聖祈教の信者になればウイルスによって死ぬ事は無いと言い張った。

「こうゆうのって反発したくなるのよね」

可愛い外見を持ちながら悪魔の異名を持つフィーロがクスクスと微笑う。

彼はこの名前の無い街で数少ない富裕層の青年だった。

「フィーロ様、壊滅した街に一人だけ生き残った者が居るとの事」

部下の一人がフィーロに報告する。

「すぐに連れて来て」

フィーロにそう言われた部下達はすぐにその壊滅した街へと急いだ。

その街にあるゴミ山にその生き残りは居た。

「見つけたぞ」

フィーロの部下達はその生き残りを無理矢理連れ去ろうとした。

「何処へ行くんです?」

生き残りである『彼』がフィーロの部下達に尋ねる。

「死に損ないのお前が何故死なずに居られるのかを調べさせてもらう」

部下の一人がそう言うと『彼』は「そうですか」と言って抗う事無く部下の集団にフィーロの元まで連れて行かれた。

「連れて参りました」

部下がフィーロに『彼』を突き出す。

「やぁ、良く来たね。歓迎するよ」

フィーロは笑顔で『彼』を迎えた。

「貴方は何故俺が死なないのかを調べてくれるのか?」

『彼』がフィーロをジッと見て聞く。

「興味があるから調べるよ。どうやら君自身がその理由を知りたい様だね」

フィーロは『彼』の顔に笑顔のまま顔を近付ける。

「知りたいさ。同じ街に居たみんなは死のウイルスに感染して亡くなった。俺だけ死なないなんておかしいだろう」

『彼』は言う。

「そうだね。では早速採血をさせてもらうよ。色々調べたいから多めに採るけどその後はゆっくり休んで。食事も住む部屋も提供するから」

そう言いながらフィーロは『彼』から笑顔は崩す事無く離れた。

「ここからはあたしについて来て」

白衣を身に纏ったスレンダーな女性が『彼』の前に現れた。

「あ、僕はフィーロ。彼女はマリアだ。君の名前は?」

フィーロは自分とマリアを紹介しながら『彼』に名前を聞いた。

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