2025/05/11 待ち人

 半透明の板が四つある。パズルのようにいくつものパーツが繋がり板状になっているもので、表面にひび割れたような線が走っている。このパーツを組み合わせてプラモデルか何かを作ろうとしていた。

 板を指先で押してみると、パーツが簡単にくり抜かれて地面に落ち、そのままどこかへ消えてしまった。必要な部品を落とし、それが消えてゆくのをただ見守る。これを何度も繰り返しているうちに板は穴だらけになった。もう少しで目的が達成できるような気がした。


 何を作ろうとしていたのかわからないが『仕切り』に当るパーツが重要だと考えていた。

 仕切り部分は鍵のような複雑な形状をしており、一つパーツをくり抜くと、隣り合った小さな部品まで一緒に取れてしまう。この小さな部品はおそらく端材だが、もしかしたら使うこともあるかもしれないと思い、念のためとっておくことにした。しかし、四つある板のうちの二つ分は回収できたが、残りの二つはうっかり捨ててしまった。


 何はともあれパーツの準備は済んだので、後は待ち人が来るのかどうかが問題だった。

 待ち人が誰なのか分かっていなかったが、おそらく将軍か、その遣いの者だろうと思った。


 洗面所横のベンチに腰を下ろした。

 タオルを収納しているはずの籠の中に、待ち人が荷物を詰め込んで行くイメージが浮かぶ。色とりどりのラッピングペーパーやリボンで包装されたものばかりだった。クリスマスプレゼントだろうと思った。それらが四つの籠に乱雑に積み上げられてゆく。洗面所の鏡を見るが、曇っていて何も映らない。

 実際は、私を覆うようにカーテンが下ろされているため、周りを見ることができなかった。カーテンの裾は私の膝くらいの位置だったので、向こうが足を見て気付いてくれないだろうかと思っていた。けれど同時に、気付かれるのが怖いような気もしていた。


 数回人の通り過ぎる足音を聞いた後、誰かが洗面所に入ってくる気配を感じた。しかし、待ち人ではないようだった。ため息をついた。ごそごそとタオルを漁る音がした。弟だろうかと思った瞬間、カーテンの向こうから膝を蹴られて目が覚めた。

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夢日記 やわらかい @enmascarado

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