第8話 一国一城
時は流れて、俺とフィルマは十歳の誕生日を迎えた。
この世界では五歳で職業を授かり、十歳で準成人の扱いを受けるようになる。で、俺とフィルマも準成人の扱いになるのだ。
……とは言っても、準成人になると働き手として活動するようになるというだけで、既に家の農業を手伝っている俺にはあまり関係が無い事実ではある。
しかし、フィルマにとっては特別な区切りでもある。そう、実戦に参加することが出来るようになるのだ。
実戦とは言っても、村近くの森で獣を狩るだけなのだが、ただ淡々と素振りと模擬戦だけだったこれまでと比べると大きな変化である。
つい先程、ルンルンと浮かれまくっていたフィルマが大人達とともに森へ向かってくのを見送った俺は、「あの浮かれっぷりでミスしたりしないだろうか」と心配しつつも今日の分の畑仕事に取り組もうと鍬を片手に家を出ようとすると、
「セイル。ちょっと待て」
と、父さんに背後から呼び止められた。一体何だろうと振り返ると、オールバックで撫でつけられた金髪を撫でながらアクアグレイの鋭い目付きで俺を見下ろす父さんが居た。
「どうしたの、父さん」
何かあったのかと尋ねれば、スタスタと歩いて俺を追い抜かすと、少し離れた前で立ち止まり振り返る。
「畑に行く前に、ついて来い」
それだけ言うとまたスタスタと歩き出す父さん。俺は慌ててその後を追いかけて父さんの横に並ぶ。
「ついては行くけど、一体何があったの」
「……それは、着いてからのお楽しみだ」
それだけ言うと、また
そうして特に会話も無く歩くと、いつの間にか出来ていたちょっとした空き地の前で父さんが立ち止まる。
「セイル。これを見ろ」
「これって……空き地?納屋があるって事は、新しい畑かな」
「それはお前の自由にしろ。ここは、お前の土地だ」
「……へ?」
父さんの言葉の意味をすぐには飲み込めず、少し硬直する。そして、
「ここが俺の土地ってどういう事!?」
思わず叫んでしまう。父さんは俺から視線を逸らすこと無く……と言うか、表情すらも変えずに口を開く。
「職業を授かってからの、セイルのこれまでを見ていて、セイルの授かった職業は普通のものでは無いと感じた。だから、村長に直談判して小さいながらも土地を貰ったんだ」
「いや、直談判って……!?」
「もし、もっと土地が欲しくなったら自分で木を切って広げても良いという許可も貰っている」
「更に凄い事になってる!?」
淡々と言う父さんに色々とツッコみたい気持ちが湧き上がる。というか少し漏れ出た。けど……
「……かなり驚き疲れたけど。ありがとう、父さん。俺、これからも頑張るよ!」
「そうか……。セイル、お前はうちの作業に参加しなくて良い。この土地を使って色々としろ」
そう言い残してさっさと立ち去っていく父さんの背中を見送りながら、
「感謝してるのは事実だけど……なんだろう。この言葉に言い表せない複雑な気持ち」
少しモヤモヤとしたものが胸中に残った。
―――――――――――――――――――――――NAME:セイル
RACE:
JOB:生産者 Lv.5
SKILL
『農作業Lv.8』『養育Lv.5』『鍛冶Lv.4』『細工Lv.1』『木工Lv.1』『彫刻Lv.1』『描画Lv.1』『裁縫Lv.1』『調合Lv1』『醸造Lv.1』『製品Lv.1』『家事Lv.5』『調教Lv.1』『孵化Lv.1』『武器鍛冶Lv.2』【『鍛冶』からの発展】『防具鍛冶Lv.2』【『鍛冶』からの発展】『道具鍛冶Lv.3』【『鍛冶』からの発展】『剣術Lv.1』『収集Lv.1』【『採集Lv.1』『解体Lv.1』『収穫Lv.1』『奪取Lv.1』内包】『料理人Lv.2』【『料理』『調理』『食材加工』『包丁術(調理)』内包】
―――――――――――――――――――――――
「うーむ……」
規模は小さいが一国一城の主になった俺は、グスタフさんが作ってくれた納屋に寄り掛かりながら自分のステータスを改めて確認しながら、この土地を利用して何が出来るのかと考え込む。
先程確認したが、納屋の中には鍬と斧が一本ずつ。小さめの荷車が一つ入っていた。これらもグスタフさんが先程準成人祝として持って来てくれたものだ。納屋も、グスタフさんが作ってくれたと物だとこの時教えてもらった。
「……取り敢えず、耕すか」
炉も道具も材料も無いため鍛冶は出来ない。これまた、場所も道具も材料もないので料理も論外。その他も道具も材料もない為、俺に出来るのは鍬一本あれば出来る耕起だけだった。
「兎に角、これからは材料集めに集中しますかー」
そんな事を呟きながら、いつも通り鍬を持って地面に勢い良く突き刺したのだった。
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