消えた影。

チキンナゲット65p

影の行方

 私の影がまた消えた。

今月に入ってもう5度目だ。

私がトンネルに入ったことをいいことに

太陽の隙を見て逃げ出したみたいだ。

気づいた時にはトンネルから離れて

10分くらい経っていた。

このまま探しに行かないといけないが

学校もまもなく始まる。仕方がない。

私はため息をつきながら学校へ渋々向かう。

また先生に注意されちゃう。

友達もよくあることだよって慰めてくれた。

5回目はよくあることじゃないと思う。

慰めてくれたのは嬉しいけど、

多分変なんだろうな。

私がしっかりしてないからだろうな。


 学校に着いて先生に言われる。

「5回目ですよ?しっかりしてください。」


ほら、やっぱり。

「でも、トンネルに入っていたので…」


「理由は分かります。とはいえ、5回は

さすがに気が抜けてるのでは?」


抜けているのは影なのに。

私はぐっと堪える。


「学校が終わるとすぐに探すんですよ?」

先生が呆れた顔して私に言ってくる。


私だってしたいわけじゃないのに。

世の中は理不尽だ。

私は職員室を出て、

ため息をこぼしながら教室に帰る。

友達からどうだった?という心配と

励ましをもらう。

みんな優しいな。私が悪いのに。


 昼休みになった。

私は大人しく外を見る。

いいなー。私も遊びたいな。

でも影ないもんなーっと落ち込む。

ひょっこり顔出してくれたらいいのに。

校庭や廊下で自分の影が戻ってきてないか

気にして見たけれど、

やっぱり見つからなかった。


 放課後、私はすぐにトンネルへ向かう。

どこへ行ったんだろう。不安は募るばかり。

影が消えたと分かって振り返ったとき

はぐれた影は居なかった。公園の方かな。

私は地面をよく目を凝らしながら歩いた。

前は、自動販売機に隠れていた。

その前は、お地蔵様の前で、

そのまた前は、大きな木の下にいた。


 公園についた。懐かしいと思った。

子どもたちが3人遊んでいた。

子供たちは、鬼ごっこをしていた。

私は滑り台やシーソーの下を探したが

全然見当たらなかった。砂場にもいない。

ここにはいないのかな。ベンチに腰掛けた。

子供たちはきゃっきゃと遊んでいた。

懐かしい。私も昔はああやって

友達とかけっこしてたな。

子供は3 人、影は4人分走り回っている。


「あー!!見つけた!!」


私は大きな声を出してしまった。

子供たちが振り返る。

影も私を見た。


「この影、おねーちゃんの?」

子供の一人が声をかけてきた。


「そうなの!探してたの」


「そうなんだ!じゃー、またね!」


「またあそーぼーなー!」

子供たちは私の影に向かって言う。


「遊んでくれてありがとうね、

みんなも気をつけてね」


私は影を見ながら振り返る。

影は子供たちに手を降っていた。


心配したんだよと思いながら足を出す。

影も私の足に合わせて足を出す。

ぴったりくっついたのを確認する。

その場で足を上げたり、歩いたり。

よし。


 私は遊びたかったのかな。

そう思いながら影をみる。

影は何もなかったかのようについてくる。


こうして私はオトナになっていくのかな。

大変だなぁ。まぁ、いいか。

私は影と一緒にお家に帰った。

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