第十章
第10章 決戦
深淵の奥深くで、アレンとセーラは、魔王の完全復活を阻止する方法を探していた。禍々しい魔力が満ちる空間で、二人の心は、不安と緊張に押しつぶされそうになる。
「…手がかりは、ないのか…?」
アレンは、周囲を見回しながら、呟いた。
「…わからないわ。でも、諦めるわけにはいかない…」
セーラは、力強く言った。
「…カインさんを信じて、私たちにできることをするしかない…」
二人は、暗闇の中を、慎重に進んでいった。
しばらく歩いていると、前方に、微かな光が見えてきた。
「…あれは…?」
アレンは、目を凝らした。
光は、徐々に大きくなり、やがて、その正体が明らかになった。
そこには、巨大な祭壇が設置されており、その中央に、一人の人間が囚われていた。
「…あれは…、人間…?」
セーラは、驚きの声を上げた。
祭壇に囚われていたのは、若い女性だった。女性は、鎖で縛られ、意識を失っているようだった。
「…まさか、生贄…!?」
アレンは、嫌な予感がした。
「…急いで、助けなければ…!」
二人は、祭壇へと駆け寄った。
しかし、その時、二人の前に、黒曜会の首領が現れた。
「…邪魔を、させない…」
首領は、冷たく言い放った。
「…貴様らの目的は、なんだ…!?」
アレンは、剣を構え、首領を睨みつけた。
「…魔王様の復活…」
首領は、答えた。
「…そして、この世界を、あるべき姿に戻すことだ…」
「…あるべき姿…だと…?」
セーラが尋ねた。
「…そうだ。弱者は滅び、強者だけが生き残る世界…」
首領は、狂気を孕んだ目で、二人を見据えた。
「…それが、魔王様が望む、真の世界だ…」
「…そんなこと、絶対にさせない…!」
アレンは、怒りを込めて叫んだ。
「…私たちは、あなたを倒し、魔王の復活を阻止する…!」
「…できるものなら、やってみるがいい…」
首領は、不敵な笑みを浮かべた。
「…だが、その前に、貴様らには、消えてもらう…!」
首領は、そう言うと、杖を振り上げ、魔法を唱えようとした。
「…させるか…!」
アレンは、剣を構え、首領に向かって突進した。
アレンは、渾身の力を込めて剣を振るう。しかし、首領は、それを軽々と受け止め、不敵な笑みを浮かべた。
「…無駄だ。勇者の力に目覚めたとはいえ、今の貴様では私には勝てない…」
首領は、そう言うと、アレンを突き飛ばした。
「…くっ…!」
アレンは、地面に叩きつけられ、苦悶の表情を浮かべた。
「アレン!」
セーラが駆け寄ろうとした。しかし、首領は、セーラに向かって魔法を放った。
「…ダークネスボルト!」
黒い光弾が、セーラに襲いかかる。
「…危ない!」
アレンは、立ち上がり、セーラを庇った。光弾は、アレンの背中に直撃し、アレンは再び地面に倒れた。
「…アレン…!」
セーラは、涙を流しながら、アレンに駆け寄った。
「…大丈夫…、かすり傷だ…」
アレンは、強がって見せたが、その体は、限界に近づいていた。
「…もう、やめて…!」
セーラは、首領に向かって叫んだ。
「…あなたたちの好きにはさせない…!」
「…無駄な抵抗はやめろ…」
首領は、冷たく言い放った。
「…魔王様の復活は、もはや、誰にも止められない…」
「…そんなこと…」
セーラは、絶望的な表情を浮かべた。
その時、アレンは、自分の胸に手を当てた。
「…まだだ…、まだ終わってない…」
アレンは、自分自身に言い聞かせるように呟いた。
「…僕は、諦めない…!」
アレンは、立ち上がった。
「…まだ、僕には、やるべきことがある…!」
アレンは、剣を構え、再び首領に立ち向かった。
「…しつこい奴だ…」
首領は、吐き捨てるように言った。
「…何度立ち上がろうと、結果は同じだ…!」
首領は、再び魔法を唱えようとした。
しかし、その時、アレンの剣が、眩い光を放ち始めた。
「…な、なんだ…!?」
首領は、驚きの声を上げた。
アレンの体は、光に包まれ、その姿は、まるで、伝説の勇者のようだった。
「…これが、僕の…、真の力…!」
アレンは、剣を構え、首領に向かって突進した。
アレンの剣は、光の速さで動き、首領の攻撃を全て打ち払う。
「…ば、馬鹿な…!?」
首領は、信じられないといった表情で、アレンを見つめた。
「…これが、勇者の力だというのか…!?」
「…そうだ…!」
アレンは、力強く答えた。
「…僕は、この力で、お前を倒す…!」
アレンは、渾身の力を込めて、剣を振り下ろした。
「…はあああああ!」
剣は、首領の体を深々と切り裂いた。
「…ぐあああああ!」
首領は、断末魔の叫びを上げ、倒れた。
「…やった…」
アレンは、息を切らしながら、立ち上がった。
「…アレン…!」
セーラが駆け寄ってきた。
「…無事なのね…!」
「…ああ、なんとか…」
アレンは、セーラに微笑みかけた。
「…でも、まだ終わってないわ…」
セーラは、祭壇の方を指差した。
「…あの女性を、助けなければ…」
「…ああ、そうだな」
アレンは、頷いた。
二人は、祭壇へと向かった。
祭壇に囚われていた女性は、まだ意識を失っていた。
「…どうすれば、この鎖を…?」
アレンは、鎖を調べながら言った。
「…私に任せて」
セーラは、杖を構え、魔法を唱えた。
「…解呪!」
セーラの杖から、光が放たれ、鎖を包み込んだ。光が消えると、鎖は音を立てて崩れ落ちた。
「…よし…!」
アレンは、女性を抱きかかえ、祭壇から降ろした。
「…ここは、危険だ。早く、脱出しよう」
アレンは、セーラに言った。
二人は、女性を連れて、深淵から脱出しようとした。
しかし、その時、背後から、声が聞こえた。
「…逃がさない…」
二人が振り返ると、そこには、カインが立っていた。しかし、その表情は、いつもとは違っていた。
「…カインさん…?」
アレンは、戸惑いの声を上げた。
「…どうして…?」
カインは、ゆっくりと二人の方へ歩いてきた。
「…私は、お前たちを、ここから逃がすわけにはいかない…」
カインは、冷たく言い放った。
「…魔王様の復活は、もうすぐだ…」
「…何を言ってるんですか…!?」
セーラが叫んだ。
「…あなたは、私たちの仲間でしょう…!?」
「…仲間…?」
カインは、嘲笑うように言った。
「…そんなものは、最初から存在しない…」
カインは、そう言うと、剣を抜いた。
「…私は、魔王様の忠実な僕…」
カインは、冷たい眼差しで、二人を見据えた。
「…貴様らを、ここで始末する…」
「…カインさん…!」
アレンは、絶望的な声を上げた。
「…嘘だ…、カインさんが、そんなこと…」
アレンは、信じられないといった表情で、カインを見つめた。
「…今まで、僕たちを助けてくれたじゃないか…!」
「…あれは、全て演技だ」
カインは、冷たく言い放った。
「…お前たちを利用して、魔王様を復活させる。それが、私の目的だった」
「…そんな…」
セーラは、涙を流しながら、首を横に振った。
「…どうして…、どうして、こんなことを…!?」
「…この世界は、間違っている…」
カインは、静かに語り始めた。
「…弱者は虐げられ、強者だけが甘い汁を吸う。そんな世界は、間違っている…」
「…魔王様は、この世界を、正しき姿へと導いてくださる…」
「…だから、私は、魔王様にお仕えする…」
「…違う…!」
アレンは、叫んだ。
「…そんなのは、間違ってる…!」
「…弱者を守り、みんなが幸せに暮らせる世界を、僕たちは目指すべきなんだ…!」
「…理想論だな」
カインは、嘲笑った。
「…そんなものは、絵空事に過ぎない…」
「…現実を見ろ。この世界は、力こそが全てだ…」
「…それでも、僕は…!」
アレンは、剣を構え直した。
「…僕は、あなたを止める…!」
「…できるものなら、やってみろ…」
カインも、剣を構えた。
「…だが、忘れるな。私は、お前たちよりも、ずっと前から、この世界を見てきた…」
カインは、そう言うと、アレンに向かって突進した。
激しい剣戟が、深淵に響き渡る。
アレンは、必死にカインの攻撃を受け止める。しかし、カインの剣は、重く、鋭い。
「…くっ…!」
アレンは、次第に追い詰められていった。
「…アレン、私が援護するわ…!」
セーラが、魔法を唱えようとした。しかし、カインは、セーラに素早く接近し、杖を叩き落とした。
「…邪魔をするな…!」
カインは、セーラを突き飛ばした。
「…セーラ!」
アレンは、叫んだ。
「…これで、邪魔者はいなくなった…」
カインは、再びアレンに向き直った。
「…さあ、終わりにしよう…」
カインは、そう言うと、剣を高く掲げた。
カインの剣が、アレンに向かって振り下ろされる。アレンは、絶体絶命の危機に陥った。
(…もう、ダメなのか…?)
アレンは、死を覚悟した。
しかし、その時、アレンの体の中で、何かが弾けるような感覚があった。
「…うおおおおおお!」
アレンは、無意識のうちに叫び声を上げていた。体の中から、熱い力が湧き上がってくる。
アレンの剣が、眩い光を放ち始めた。それは、以前、試練の間で覚醒した時よりも、さらに強力な光だった。
「…な、なんだ…!?」
カインは、驚きの声を上げた。
アレンは、光に包まれながら、カインの剣を受け止めた。
「…ぐっ…!」
カインは、アレンの力に押され、後退した。
「…これが、僕の…、真の力…!」
アレンは、力強く叫んだ。
「…僕は、負けない…! みんなを守るために、絶対に…!」
アレンは、剣を構え直し、カインに向かって突進した。
アレンの剣は、光の速さで動き、カインの攻撃を全て打ち払う。
「…ば、馬鹿な…!?」
カインは、信じられないといった表情で、アレンを見つめた。
「…こんな力が、どこに隠されていたというのだ…!?」
「…これは、僕だけの力じゃない…!」
アレンは、答えた。
「…セーラ、ガルドさん、エルウィン先生、ガウェインさん…、そして、今まで出会った全ての人たちの想いが、僕に力を与えてくれているんだ…!」
「…想い…だと…?」
カインは、嘲笑うように言った。
「…そんなもので、何ができる…!?」
「…想いは、力になる…!」
アレンは、力強く言った。
「…人と人との繋がりは、どんな困難をも乗り越える、希望の光となるんだ…!」
アレンは、渾身の力を込めて、剣を振り下ろした。
「…はあああああ!」
剣は、カインの剣を弾き飛ばし、カインの体を深々と切り裂いた。
「…ぐあああああ!」
カインは、断末魔の叫びを上げ、倒れた。
「…カイン…さん…」
アレンは、息を切らしながら、カインを見下ろした。
「…なぜだ…、なぜ、私に逆らう…?」
カインは、苦しそうな声で尋ねた。
「…魔王様は、私たちに、永遠の安らぎを与えてくださる…」
「…違う…!」
アレンは、否定した。
「…安らぎは、自分で掴み取るものだ…! 他人に与えられるものじゃない…!」
「…お前には、わからない…」
カインは、そう言うと、目を閉じた。
「…私は、間違っていたのか…?」
カインは、最後にそう呟き、息を引き取った。
「…カインさん…」
アレンは、カインの死を悼んだ。
カインの死を見届けたアレンは、セーラの方を振り返った。セーラは、気を失っている女性を抱きかかえ、アレンの無事を祈るように見つめていた。
「セーラ、無事か!?」
アレンは駆け寄り、セーラの無事を確認すると、深く安堵の息をついた。
「ええ、私は大丈夫。それよりも、この人を…」
セーラが抱える女性は、依然として意識を取り戻さない。
「彼女は…魔王復活の儀式の生贄にされそうになっていたんだ」
アレンは、先ほどの祭壇を思い出しながら言った。
「急いでここから脱出して、安全な場所で手当てをしないと…」
「…でも、出口がわからないわ…」
セーラは、不安そうに周囲を見回した。深淵の中は、どこまでも続く闇が広がっている。
「…カインが、魔王は深淵を通って現世に現れると言っていた…」
アレンは、記憶を辿りながら言った。
「…つまり、この深淵のどこかに、現世へと繋がる出口があるはずだ…」
「…探してみましょう」
セーラは、力強く頷いた。
二人は、意識のない女性を交互に背負いながら、深淵の中を歩き始めた。
どれくらい歩いただろうか。暗闇の中、時間感覚は麻痺し、疲労だけが蓄積していく。
「…アレン、少し休まない…?」
セーラが、息を切らしながら言った。
「…そうだな。彼女も心配だし…」
アレンは、周囲を見渡し、比較的安全そうな場所を見つけた。
二人は、女性を横たえ、自分たちもその場に座り込んだ。
「…このまま、出口は見つかるのかしら…」
セーラは、不安を隠せない。
「…大丈夫だ。必ず、見つけ出す」
アレンは、セーラの手を握りしめた。
「…僕たちは、一人じゃない。カインさんは…、間違っていたかもしれないけど、最後まで信じてくれた仲間だ。ガルドさんやエルウィン先生、それにガウェインさんも、僕たちを応援してくれている…」
「…ええ、そうね…」
セーラは、アレンの言葉に励まされ、少しだけ笑顔を取り戻した。
その時、アレンの剣が、微かに光を放った。
「…なんだ…?」
アレンは、剣を見つめた。剣は、まるで、何かを指し示すかのように、特定の方向を向いている。
「…セーラ、見てくれ。この剣、何かを感じているみたいだ…」
「…本当だわ…」
セーラも、剣の光に気づいた。
「…もしかしたら、この先に、出口があるのかもしれない…」
「…行ってみよう」
アレンは、立ち上がった。
二人は、再び、女性を背負い、剣の光が示す方向へと歩き始めた。
剣の光に導かれ、アレンとセーラは深淵の中を進んでいく。しばらくすると、前方に、ぼんやりとした光が見えてきた。
「…あれは…!?」
アレンは、目を凝らした。
光は、徐々に大きくなり、やがて、その正体が明らかになった。
そこには、巨大な門がそびえ立っていた。門は、固く閉ざされているが、隙間から、眩い光が漏れ出している。
「…間違いない。あそこが、現世へと繋がる出口だ…!」
アレンは、確信したように言った。
「…でも、どうやって開けるの…?」
セーラは、門を見上げながら言った。
門には、鍵穴のようなものは見当たらない。
「…わからない。でも、何か方法があるはずだ…」
アレンは、周囲を見回した。
その時、アレンの足元に、小さな石碑があることに気づいた。
「…これは…?」
アレンは、石碑を調べてみた。石碑には、古代文字が刻まれている。
「…セーラ、これを読んでくれないか?」
アレンは、セーラに頼んだ。
セーラは、石碑の文字を読み始めた。
「…『光の剣を、門に翳せ…』…?」
セーラは、首を傾げた。
「…光の剣…?」
アレンは、自分の剣を見つめた。
「…まさか…」
アレンは、剣を構え、門に向かって突き出した。
すると、剣から眩い光が放たれ、門全体を包み込んだ。
光が収まると、門は、ゆっくりと音を立てて開き始めた。
「…開いた…!」
アレンは、驚きの声を上げた。
「…すごい…!」
セーラも、目を輝かせている。
「…さあ、行くぞ!」
アレンは、セーラと、意識のない女性を連れて、門の中へと入っていった。
門をくぐると、そこは、王宮の地下にある、古代の祭壇だった。
「…ここは…?」
アレンは、周囲を見回した。
「…間違いない。私たちが最初にいた場所よ…」
セーラが言った。
「…ということは、私たちは、深淵から脱出できたのね…!」
「…ああ、そうみたいだな」
アレンは、安堵の息を吐いた。
「…でも、まだ安心はできないわ」
セーラは、気を引き締めるように言った。
「…魔王の復活は阻止できたけど、黒曜会はまだ健在よ」
「…ああ。奴らの企みを、完全に阻止しなければ…」
アレンは、力強く頷いた。
「…まずは、この女性を安全な場所へ…」
アレンは、意識のない女性を見つめた。
「…それから、ガウェインさんに報告して、今後の対策を練らないと…」
「…そうね」
セーラも、同意した。
二人は、女性を連れて、祭壇を後にした。
アレン、セーラ、そして意識不明の女性を連れ、王宮の地下から脱出した三人は、急ぎ「猫の隠れ家」へと戻った。ガルドは、三人の無事な姿を見て、心から安堵した。
「…無事でよかった…! 一体、何があったんだ!?」
ガルドは、矢継ぎ早に質問を浴びせた。アレンは、深淵での出来事、カインの裏切り、そして魔王復活の儀式を阻止したことを、かいつまんで説明した。
「…なんと…、そんなことが…」
ガルドは、言葉を失った。
「…カインが、魔王の側についていたなんて…」
「…信じられないけど、本当のことなんだ」
アレンは、悔しそうに言った。
「…でも、僕たちは、諦めない。必ず、魔王を倒し、世界を救う…!」
「…ああ、私も協力する」
セーラも、力強く言った。
「…まずは、この女性を…」
アレンは、意識のない女性を見つめた。
「…安全な場所で、休ませてあげないと…」
「…ああ。俺の部屋を使ってくれ」
ガルドは、そう言うと、三人を自身の部屋へと案内した。
女性をベッドに寝かせ、アレンとセーラは、ガルドに今後の相談をした。
「…ガウェインさんに、このことを報告しなければ…」
アレンは、言った。
「…黒曜会は、まだ何か企んでいるかもしれない…」
「…ええ。でも、どうやって…?」
セーラが尋ねた。
「…王宮は、今、厳戒態勢だろうし…」
「…私に、考えがある」
カインが、静かに言った。
「…以前、王宮に勤めていた頃の伝手を使って、ガウェインさんに連絡を取ってみる」
「…本当ですか!?」
アレンは、希望の光を見出したように、カインを見た。
「…ああ。ただし、時間がかかるかもしれない」
カインは、続けた。
「…その間、お前たちは、ここで待機していてくれ」
「…わかりました」
アレンは、頷いた。
カインは、部屋を出ていき、アレンとセーラは、女性の看病をしながら、カインの帰りを待った。
数時間後、カインが戻ってきた。
「…ガウェインさんと連絡が取れた」
カインは、言った。
「…明日の夜、秘密裏に会うことになった」
「…よかった…!」
アレンは、安堵の息を吐いた。
「…場所は…?」
セーラが尋ねた。
「…王都の外れにある、古い教会だ」
カインは、答えた。
「…そこで、全てを話す」
「…わかりました」
アレンは、頷いた。
翌日の夜、アレン、セーラ、カインの三人は、指定された教会へと向かった。
教会の中には、ガウェインが一人で待っていた。
「…カイン、久しぶりだな」
ガウェインは、カインを見て、言った。
「…まさか、お前から連絡が来るとは思わなかった」
「…すまない、ガウェイン。迷惑をかける」
カインは、頭を下げた。
「…事情は、大体わかった」
ガウェインは、アレンとセーラを見た。
「…君たちが、勇者の末裔と、魔法学校の…」
「…はい」
アレンとセーラは、頷いた。
「…魔王の復活は阻止できた。だが、黒曜会はまだ健在だ」
ガウェインは、続けた。
「…奴らの企みを、完全に阻止しなければならない」
「…そのためには、どうすればいいんですか?」
アレンが尋ねた。
「…黒曜会の首領を倒すしかない」
ガウェインは、きっぱりと言った。
「…首領は、強大な魔力を持っている。生半可な覚悟では、勝てないぞ」
「…覚悟は、できています」
アレンは、力強く答えた。
「…僕たちは、必ず、奴を倒します…!」
「…よし。ならば、作戦を立てよう」
ガウェインは、頷いた。
四人は、夜遅くまで、作戦会議を行った。
そして、ついに、決戦の時が来た。
アレン、セーラ、カイン、そしてガウェイン率いる王宮騎士団は、黒曜会の本拠地へと向かった。
本拠地は、王都の地下深くに隠された、巨大な洞窟だった。
洞窟の中には、黒曜会の信徒たちが、大勢待ち構えていた。
「…来たな、勇者…!」
黒曜会の首領が、不気味な笑みを浮かべた。
「…今日こそ、貴様を倒し、魔王様を復活させる…!」
「…そうはさせない…!」
アレンは、剣を構え、首領に立ち向かった。
最後の戦いが、今、始まった。
アレンは、剣を振るい、首領に斬りかかる。セーラは、魔法を使い、アレンを援護する。カインとガウェインは、王宮騎士団を指揮し、黒曜会の信徒たちと戦う。
激しい戦闘が、洞窟中に響き渡る。
アレンは、渾身の力を込めて、剣を振り下ろした。
「…はあああああ!」
剣は、首領の体を深々と切り裂いた。
「…ぐあああああ!」
首領は、断末魔の叫びを上げ、倒れた。
「…やった…!」
アレンは、息を切らしながら、立ち上がった。
「…アレン…!」
セーラが駆け寄ってきた。
「…無事なのね…!」
「…ああ、なんとか…」
アレンは、セーラに微笑みかけた。
「…これで、全て終わったのか…?」
アレンは、周囲を見回した。
黒曜会の信徒たちは、まだ残っている。しかし、首領を失った彼らに、もはや戦う力は残っていなかった。
「…終わったんだ…」
セーラは、涙を流しながら言った。
「…私たちは、勝ったのよ…!」
「…ああ、そうだな」
アレンは、セーラを抱きしめた。
カインとガウェインも、アレンたちの元へ駆け寄ってきた。
「…見事だったぞ、アレン」
カインは、アレンの肩を叩いた。
「…お前は、真の勇者だ」
「…ありがとうございます、カインさん」
アレンは、カインに感謝した。
「…これで、世界は救われた…」
ガウェインは、安堵の息を吐いた。
「…しかし、油断は禁物だ。魔王の残滓は、まだどこかに潜んでいるかもしれない」
「…ええ、わかっています」
アレンは、力強く頷いた。
「…これからも、私たちは、世界を守るために戦い続けます」
「…それが、勇者の使命だから」
アレンとセーラは、互いに見つめ合い、微笑んだ。
空には、満月が輝いている。
長い戦いは終わった。
しかし、彼らの冒険は、まだ終わらない。
新たな脅威が現れるかもしれない。
それでも、彼らは、決して諦めないだろう。
なぜなら、彼らは、勇者だから。
黒曜の野望と白銀の剣 小世 真矢 @march200305
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