隠された真実

マジョルカ

第1話 謎の手紙

秋の風が、大学のキャンパスを吹き抜ける。アリス・フランクリンは、いつものように図書館の一角でノートパソコンを開いていた。政治学の研究に没頭する日々が続き、特に最近は「グローバルエリート」と呼ばれる影響力を持つ集団についての論文を執筆していた。表向きは普通のビジネス、時には慈善活動を行っているように見える企業や団体の裏で、実際にはどれほど多くの力を持ち、政治や経済を動かしているのか。そのようなテーマに取り組んでいた。


だが、そんな日常の中で、アリスの目に飛び込んできたのは一通の奇妙な手紙だった。


その手紙は、彼女の名が書かれた白い封筒に入っていた。差出人の名前はなく、ただ一つ、薄く見える文字で「真実を追い求めよ」とだけ書かれていた。手紙を開けると、中には古びた新聞記事の切り抜きと、さらに一枚の名刺が入っていた。


新聞の記事には、「セヴァリス・グループ、再生可能エネルギーの先駆者として国際的に注目」というタイトルがあった。その内容は、再生可能エネルギーの開発に成功した企業としてセヴァリス・グループが持ち上げられているものだったが、アリスはそこで不審な点に気づいた。記事の中に出てくる名前が、すでに何度も彼女の研究に登場していた人物たちと一致していたからだ。


さらに、記事の隅には「本当の力は、あなたの見えないところで動いている」という、まるで警告のような一文が小さく記されていた。


アリスは眉をひそめ、名刺を取り出した。その名刺にはただ一言、「セヴァリス・グループ 本部」とだけ書かれている。電話番号や住所も記載されていなかった。名刺の裏には何も書かれていない。だが、その奇妙な手紙は、彼女に何か重要な事実を知らしめようとしているのだろうか。


「セヴァリス・グループ……」アリスは小さく呟きながら、パソコンの画面にその企業名を打ち込んだ。


セヴァリス・グループに関する情報は、どれも表向きのものばかりだった。再生可能エネルギーや環境保護に力を入れる企業として評価され、世界各国のリーダーたちとの連携が強調されている。しかし、その影にはまったく触れられたことがない。企業の経営陣の顔ぶれは、どれも曖昧で、過去に遡ると突然その存在が消え失せている。まるで、その企業が出現してから急成長するまで、過去の記録を隠してしまったかのようだった。


アリスはさらに調査を進めることにした。昼間の研究室では調べきれない何かがそこにある。セヴァリス・グループを掘り下げれば、何かが明らかになるはずだ。そして、その「真実」を追うべきだという強い直感が彼女を突き動かしていた。


次の日、彼女はキャンパス内のカフェで友人のジョンと昼食を取る予定だった。だが、手紙と名刺のことが頭から離れない。ジョンにその話をしても無駄だろうと感じながらも、無意識にその情報を共有しようとした。だが、話している最中も、彼女は何度もその記事と名刺のことを考えていた。


昼食後、ジョンは笑いながら言った。「アリス、お前も少しは休めよ。こんな研究ばかりしてたら疲れるぞ。ちょっとは息抜きしろよ。」


アリスは無理に笑顔を作り、ジョンに「ありがとう、でも、このセヴァリス・グループって企業、ちょっと調べてみようと思ってるんだ」と告げた。その言葉に、ジョンは少し驚いた顔をしたが、すぐに元気よく「そうか、頑張れよ!」とだけ返した。


カフェを出た後、アリスは一人で図書館に向かい、セヴァリス・グループに関連する過去の書籍を探し始めた。しかし、その調査が進むにつれて、奇妙な出来事が起こり始める。周囲の空気が、次第に重く、圧迫感を伴ってきた。何かが、彼女の周囲で動き始めているのを感じ取った。


翌日、アリスの自宅に戻ると、何かが違っていた。部屋の中に入った瞬間、彼女は部屋の中が荒らされていることに気づいた。パソコンが動かされ、書類が無造作に散らばっていた。だが、最も不安だったのは、机の上に置かれた手紙だ。


それは、あのセヴァリス・グループから送られたものだった。しかし、手紙に書かれていたのは、ただひとこと――


「もう遅い。」


その時、アリスは初めて、自分がただの学者としての研究を超えて、何かとてつもない陰謀の中に足を踏み入れてしまったことを、嫌でも理解させられた。

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