目標のために

第6話

「何で、男と寝るの?」

ホテルの一室のベッドの隣で…眠っていたと思っていた俺の客、将が聞いてきた。

「それは…客として聞いてるんですか? 込み入った話…まぁ、夢を売る商売ですからあんまり聞かない方がいいんじゃないですか?」

将の目を見ながら俺は言った。

「だってさ、オレ、眞のこと知りたいんだもん。すっげぇ素敵だしさ」

……金持ちの息子の将は世間知らずだよな。

でも同情をかってチップとか貰えるかもしれない。

「金、返さなきゃなんないんですよ、親の借金。まぁ、サラ金から借りてないことが唯一の救いかな。それに近いとこから借りてたみたいだけど」

普通にいえたかな。

俺、声震えてなかったかな?

…本当のことだし。

「普通に働いてたんじゃいつ返せるか分からないですからね、…てっとり早くウリセンを…」

いいかけて…横向かされて将に頬を両手で挟まれた。

んで、キスされた。

軽く…そのまま唇は頬に滑り、将の頭は俺の肩に収まる。

「ごめん、もうしゃべらなくていいよ」

「え、あ…そうですか」

…同情、ひけたかな。

「抱き締めてくれる?」

将に言われて俺は体ごと横を向き、抱き締めた。

抱き締め返される。

「もう一回抱いてくれれば、チップはずむから、抱いてくれる?」

寂しそうに笑う。

…お?

ノってきたな。

俺は頷き、満面の笑顔で額にキスをした。

…目標が達成したら、こんな仕事さっさと辞めて…普通の暮らしをするんだ、と思いながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さいろく。 @kanra88

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る