第58話

泰良もにっこり笑って返す。

「んじゃま。新めまして、泰良で~す!よろしくねぇ」

……、だ~からおねえ言葉っぽいって。

俺はひじで泰良をつつく。

泰良は苦笑いをして手を小さく振った。

了解、っていってるらしいが、まあ無理だろな。

泰良の言葉聞いて寛人も笑ったし、まあいっか。

寛人なら受け入れられるだろ。

もう、投げやりだ。

「泰良さんって面白い方なんですね」

どうやら俺がひじでつついたのが見えたらしい。

今度は笑いを堪えている。

「でしょ? 僕もそう思うんだよね~。ささ、みかんくってくって」

みかんを寛人の手の上に乗っける。

それは、寛人が持ってきたものだぞ、泰良…。

俺はそれにはつっこまず、とりあえずみかんを黙々と食べ始めた。

二人は楽しそうに話を始めた。

で、話していくうちに好きなアーティストが重なったらしく、さらに盛り上がっている。

「え~~、Stand upご存知なんですか? あんなにマイナーなのに」

「知ってる知ってる!!いや、まさかこんなとこでファンに会えるとは思わなかったよお~」

俺の知らない話題。

頬杖をついてその様子を見守る。

やっぱ、泰良は帰すべきだったな。

俺と寛人の楽しい時間が奪われてるな。

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短編小説 @kanra88

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