第50話
別に約束してるわけじゃないんだけど。
悟志を優先するより、こっちで話すことのほうが、楽しい。
ごめん、悟志。と心の中で謝り、信司さんの家に上がる。
「今日はみかん買ってきましたよ~」
「ほんとに? 俺、柑橘系の果物好きなんだ~」
嬉しそうに信司さんは僕の腕からみかんを受け取り、こたつに入る。
僕も続いて入る。
「今日は、夕飯何食べる?」
みかんの皮を剥きながら信司さんが聞いてくる。
「ん~、何がいっかなあ」
僕もみかんを手にとり、考える。
こんな時間が何だか幸せだ。
落ち着かなかったのはそこに信司さんがいなかったからだと思う。
僕は信司さんのことが好きなのかもしれない。
この前まで悟志のことが好きだったのに。
まあ、恋愛なんてそんなものかなとか思う。
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