カンジョウ

(1)レンタルビデオ屋

第17話

「でさ~。京平がさ、そこで顔赤くしたんだよ」

バイト先の休憩室で。

いつも通りに悟志の話が始まる。

「で、可愛いと思ったから可愛いって言ったら、殴られた、グーで、頭を」

そこまで言って悟志は自分の頭を撫でる。

相変わらず、思ったことは口に出してるようだ。

しみじみ俺がその様子を見ていると悟志が俺を睨む。

「聞いてる? 信司」

なんの考えも無しに聞いてくる、悟志。俺はにっこり笑って返事をする。

「ああ、聞いてるよ。それで、どうしたんだ?」

「それでさ――」

俺の言葉を真に受けて、悟志は話を続ける。

ほんとは。

あまり聞いていない。

出来ることなら、『京平』の『き』の字も聞きたくないんだから。

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