第36話

ふと渉を見ると、にんまり笑っている。

……ちくしょう。

――これを見越して、シチューをだしたな。渉め……。

食べ物で機嫌が直るオレって一体。

「うん。直った直った」

「そ? よかった。……しっかしオマエ。頭の花丸消さなかったのか? 洗面所に行ったのに。それ、洗えば消えるヤツで書いたんだけど。その頭で美味しそうに食べてるの見ると笑えるんだけど」

え? コレ油性マジックじゃないんだ?

何かかれてるか見にいったんだけど、…あと渉が何したか。

って、そういうこと言ったらややこしくなるから、言わずに洗面所に向かう。

確かに渉のせいでムカついて忘れていたけど…。

急いで立ち上がり、洗面所へ向かう。

顔を洗っていると後ろから声がする。

「あの様子だと忘れてたな。直気っておもしれぇ奴~っ」

大声で笑う有也の声。

「……有也、そんな大声で笑っちゃご近所迷惑だよ。……っぷ」

「渉だって笑ってんじゃん。あははははは」

はーーーーっ。

笑ってろよ、二人とも。

もう怒る気力もねえよ。

ってか、これからおもちゃにされそうで怖い。

街の出ても普通に遊ばれそうで何かヤだなあ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る