(6)来訪者

第1話

オレが今の生活に慣れた頃。

半年以上たってたかな。

ちょっとした事件が起こった。

オレにとっても…事件、かな?



 相変わらず、記憶は戻らなくて。

そこらへんとか…遠出もしてみた。

けど、全く手がかり無し。

さすがにこれだけ日にちが経って記憶が戻らないのはヤバいかなあと思い、有也の名前で内職とかしてる。

機械部品の組み立てとか。

身元が分からないから外のバイトは出来なくて。

一応警察には届けて、分かるまで有也んちにいるってことになった。(いいんだろうか、ゆるいな…)

医者は、保険利かないし、金ないしってことで行ってない。

ゆっくり、記憶が戻る機会を待つことにした。

家事なども慣れてきて、ちょっとは二人の役に立ってるかな…、と思いながら暮らしていたある日。


 オレが買い物に出掛け、夕食に必要なものを買って家に帰ってきたら、

「……あ?」

うちのドアの前に、知らねえにいちゃんが立っている。

「……誰?」

思わず呟く。

新聞の勧誘…にしては何も持ってねえし。

第一、スーツ着てる。

ということは、少なくとも二十歳以上だな。

あ、でも学校でてすぐ働いてる人もいるか。

とりあえず声掛けてみるか。

「あの~? うちに何か用ですか?」

あ。

オレの声にすげえ驚いてる。

が、すぐ深呼吸をし、振り返るスーツ姿のにいちゃん。

「いきなり声掛けるなよっ! びっくりするだろ!?」

ど、怒鳴りやがった、このスーツにいちゃん。

お前もいきなり怒鳴るな。びっくりするだろ。

とは言わない。

オレ、大人だし?

ムカつくのを抑えてオレは丁寧に言ってやった。

「……見知らぬアナタがうちの前でボーっと立ってるので声を掛けたんですが。ここはオレが住んでるうちです。いきなりそんなことを言うあなたは無神経じゃないんですか!?」

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