第15話

50代後半のご主人は髭を鼻の下に蓄えていて、ちょっとかっこいい。

笑って聞いてくるその顔は人のよさそうなおじさんという感じだ。

「あ、ちょっと聞きたいことがあるんですけど、蒼貴ってだいたいここに何時までいます?」

ご主人はちょっと驚いた顔をしたがオレの質問に答える。

「ええ、っと。遅くても1時には帰るかな…。ここは2時でしめちゃうしね。……どうしたんだい?急にそんなこと聞いて。さては遅すぎる蒼貴さんにハラを立ててるのかな?」

そういってご主人は静かに笑った。

…そういうことにしておこう。

「ハイ、あまりにも遅くって、なにしてるのか心配になりまして。あ、オレがこんなこと聞いたって蒼貴には内緒にしてください。お願いします」

こんなこと聞いたって蒼貴に知られたら、絶対怪しまれるしな。

…オレはきっと蒼貴に問い詰められたら理由を話さなくちゃいけなくなる。

逆らえない、と思う。

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