#3

そう言い終わると、先生に案内され、端っこの後ろの追加された席に座った。


***


その子は昔からまじめで、ポジティブな子だった。

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休み時間になった。その子は、僕の席にきて、「お昼休みに校内案内してくれない?いやならいいけど、私って嫌われ者でしょ?」その言葉を聞いたとき、涙が出そうになった。けれども、我慢した。その子がそんなに自覚しているようにいうことはあまりなかったからだ。僕は、言われた通り、お昼休みに校内を案内してあげた。教室に戻ってくると、「ありがとう。」と笑顔で言ってくれた。どうしてあの子はあんなに無理しているのか。どうして、あんなに嫌われているのか。何もしていないと思うし、何か悪いことも、親が犯罪者だったこともない。下校の時、「一緒に帰ってくれない?私、一緒に帰る人いないから。」と話しかけてきたので、自分も普段一人で帰っているので、一緒に帰ることにした。そして、気になってしまって、聞いた。そしたら、「私、君の言う通り、何もしてない。でも、嫌われてる。それはね、幼稚園の年長さんの頃の、深見 淑子ふかみ よしこのせいなの。あの子が、私が自分より弱い子をいじめてるの見たって嘘ついて、噂を立てたんだ。それで、あの子人気あったから、みんな信じちゃって、嘘だって言ってもだれも口きいてくれなかった。それっきり、こんなんだよ。」そう言った。確かに、あの子は目立っていた。でも、あの子も何回も友達をいじめて問題になっていた。なのに、自分のことを隠そうとしたのか?あの子は自分の過去を隠すためにあんな風にして、隠そうとしていたのか?そんな人だったっけ。昔の記憶が鮮明によみがえる。あの子は、確かに隠そうとしていた悪い子だったかもしれない。どうして自分は気づけなかったんだろう。もっと早くほかの大人に言っていれば、もっと抑えられたかもしれない。自分が今、後悔しても思っても、なにも変わらない。そうわかりきっていることなのに、自分を責めていた。その姿を見て、谷口さんが

「なんでそんな顔するの?別にきみを攻めてるわけじゃないよ。恨んでもないよ。憎んでもないよ。」そう言ってくれた。でも、自分は後悔と罪悪感でまみれていて、そんな話は頭に入ってこなかった。すると、「君って、そういうところが優しいよね。他人のことも、自分のことのように見てくれて、自分のせいじゃなくても、一緒に考えてくれたり、誰よりもそういうものを思っててくれるよね。私そういうところ好きだな。」

その瞬間、僕は顔が一気に赤くなった。

「ち、違うよ。僕は、僕以外の誰かが落ち込まないようにそうやってノってるだけだよ。べつに。」

そう続けていると、谷口さんが

「そんなことないでしょ?誰よりも相手のことを思ってるよね。優しい。たとえ、それが違ったとして、自分を犠牲にしてまで相手を他人を助けたいと思って行動に移していることは変わらないでしょ?」そう言ってくれた。自分はきっと僕をかばってくれているのだと自分にそう言い聞かせた。決して、そういうことではないと。

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