#2

そして僕は玄関に走っていった。


***


なぜだかはわからない。自分の足が勝手に走り出した。無我夢中で走った。玄関についたとき、その子がいた。ちょうど上履きを手提げ袋から取り出しているところだった。その子が僕のことに気が付いた。その時、笑顔を見せて僕に

「おはよう。」

と言ってきた。僕は、「うん。」ということしかできなかった。また、いじめられてしまうのではないかと不安だった。こんな臆病な僕だったから、「僕がいるから。」なんて昔みたいには言えなかった。その子は、突っ立っている僕の手を取って、「クラスはどこ?案内してよ。」と何もなかったかのように言ってきた。ぼくは、時計を確認してその子を案内した。クラスについた瞬間、チャイムが鳴った。みんなは急いで自分の席に着いた。僕も一緒に席に着いた。その子だけが教室の中で立っていた。少し、困っていそうでもいた。そうこうしているうちに、先生が教室にきて、自己紹介をその子に促した。その子は口を開いた。

「初めまして。谷口 圓たにぐち まどかです。私が好きなものは、シュークリームです。よろしくおねがいします。」

その子の自己紹介は、小さいころから変わらなかった。そう言い終わると、先生に案内され、端っこの後ろの追加された席に座った。

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