第5話:下着泥棒VSパンツ解放同盟

## 第一章:パンツ消失事件


「重大ニュースよ!緊急事態発生!」


朝の教室に、水谷ユイの鋭い声が響き渡った。桜が咲き始めた3月上旬、温泉旅行から帰ってきて2週間ほど経った頃だった。


「どうした、ユイ?」正義ハジメは朝の漢字ドリルを解きながら顔を上げた。「また誰かが公園で変な格好でもしてるの?」


「それだけじゃないわ」ユイは周囲を警戒するように声を潜めた。「町内で相次ぐ下着泥棒事件よ。昨夜も3件の被害があったって」


「下着泥棒?」ハジメは顔をしかめた。「それはただの犯罪じゃないか。警察の仕事だろ」


「でもね」ユイはタブレットを操作しながら続けた。「この事件、かなり不可解なのよ。盗まれるのは女性ものの下着だけじゃなくて、男性ものも子供用も全部!しかも被害届が出てるのは全体の半分くらいで、残りは謎の集団が持っていってるみたい」


「謎の集団?」風間ケンジも会話に加わった。彼はいつものように少し遅れて教室に到着したところだった。


「そう」ユイは頷いた。「SNSで『パンツ解放同盟』を名乗る集団が、『我々はパンツを解放した』というメッセージを投稿してるの」


「はぁ?」ハジメとケンジは同時に首を傾げた。


ユイはさらに小声で続けた。「彼らは『パンツなど不要!自由に生きよう!』と主張してるみたいなの」


「それって…」ハジメは言いよどんだ。


「レインボーマンと同じ発想?」ケンジが恐る恐る尋ねた。


「似てるけど違うわ」ユイはメガネを直しながら説明した。「彼らは自分たちでパンツを脱ぐんじゃなくて、他人のパンツを『解放』すると言ってるの。完全に迷惑行為ね」


「でも、普通の下着泥棒もいるんでしょ?」ハジメが確認した。


「そう、それが混乱の原因なの」ユイは少し焦った様子で言った。「警察も『パンツ解放同盟』の犯行なのか、通常の下着泥棒なのか区別がつかなくて困ってるみたい」


「じゃあ、俺たちが調査するしかないな!」ハジメは眉を寄せて真剣な表情になった。「露出魔退治クラブ、出動だ!」


「でも、どうやって調査するの?」ケンジが不安そうに尋ねた。「下着泥棒って夜に活動するんでしょ?」


「それが…」ユイが言いかけたその時、教室のドアが開き、担任の松本先生が入ってきた。


「おはよう、みんな。席に着きなさい」


三人は話を中断し、急いで自分の席に戻った。


授業が始まったが、ハジメの頭の中は下着泥棒事件のことでいっぱいだった。昼休みにでも作戦会議を開こうと考えていた矢先、突然の出来事が起きた。


「きゃーっ!」


体育の時間、女子の更衣室から悲鳴が聞こえた。


授業を担当していた山田先生が急いで駆けつけると、女子たちが慌てた様子で更衣室から出てきた。


「どうしたの?」山田先生が尋ねた。


「あの、体操着に着替えようとしたら…」クラスの佐藤さんが恥ずかしそうに言った。「ロッカーの中の…その…お着替えが消えてたんです…」


「え?」山田先生は驚いた表情になった。「いつから?」


「私たちが朝、学校に来た時は確かにありました!」別の女子が答えた。


ハジメとケンジは顔を見合わせた。ユイは他の女子たちと一緒に困った表情をしていたが、ちらりとハジメたちの方を見て、小さく頷いた。


「これは大変だ」山田先生は真剣な表情になった。「校長先生に報告しなければ」


体育の授業は急遽中止となり、子どもたちは教室に戻された。


「ハジメ隊長、これは…」ケンジが小声で言った。


「ああ、下着泥棒が学校にまで…」ハジメも顔をしかめた。


「でも、なぜ学校?しかも昼間に?」ケンジが首を傾げた。


放課後、三人は校長室に呼ばれた。


「露出魔退治クラブの諸君」校長先生は心配そうな表情で言った。「今日の事件について何か情報はないかな?」


「実は校長先生」ユイが一歩前に出て言った。「町内で相次いでいる下着泥棒事件と関連があるかもしれません」


「ほう?」校長先生は興味深そうに前のめりになった。


「はい。町内では『パンツ解放同盟』という不審な集団と、通常の下着泥棒が活動しているようです」ユイは簡潔に説明した。


「なるほど…」校長先生は頬をさすった。「それで、君たちの見解は?」


「まだ調査中です」ハジメが真剣な表情で答えた。「でも、必ず犯人を見つけて、みんなの平和を守ります!」


「頼もしいね」校長先生は微笑んだ。「ただし、危険な行動は禁止だよ。あくまで情報収集と、不審者を見かけたら通報することが君たちの役目だ」


「わかっています!」三人は声を揃えた。


「それと…」校長先生は少し困った表情になった。「今回の件は少しデリケートな問題だから、他の生徒には余計な不安を与えないように注意してほしい」


「了解です」ハジメはしっかりと頷いた。


校長室を出た三人は、すぐに作戦会議のために秘密基地へと向かった。


「学校の中で下着泥棒…考えられないわ」ユイは眉をひそめた。


「しかも昼間だからね」ケンジが首を傾げた。「普通、下着泥棒って夜に活動するんじゃないの?」


「そこがポイントかもしれない」ハジメが真剣な表情で言った。「これは通常の下着泥棒じゃなくて、『パンツ解放同盟』の仕業の可能性が高いぞ」


「どうして?」ケンジが尋ねた。


「だって、ふつうの下着泥棒なら、女子のロッカーだけを狙うはずだよね」ハジメが説明した。「でも今日の事件では、男子のロッカーからも何枚か消えてたんだ」


「え?そうなの?」ユイが驚いた顔をした。


「ああ、体育の後に松本先生が男子にも確認したんだ」ハジメが頷いた。「数人の男子から『なくなっていた』という報告があったんだって」


「確かにそれは『パンツ解放同盟』の犯行パターンに一致するわね」ユイは考え込むように言った。「男女問わず『パンツを解放する』んだもの」


「でも、なんで学校?」ケンジはまだ納得がいかない様子だった。


「それを調査するのが私たちの仕事よ」ユイはタブレットを操作しながら言った。「明日から、学校内の監視を強化しましょう」


「そうだな!」ハジメも頷いた。「みんなのパンツを守るために、露出魔退治クラブ、全力で頑張るぞ!」


三人は手を重ねて、決意を新たにした。しかし、彼らはまだ知らなかった。この事件が予想以上に複雑で、奇妙な展開を見せることになるとは―。


## 第二章:対立する二つの組織


翌日、露出魔退治クラブの三人は早めに登校し、学校内の監視体制を整えていた。


「ユイ、その新しい装置は何?」ハジメが、ユイの手にある小さな箱型の機械を指さして尋ねた。


「これはね、『パンツディテクター』よ」ユイは得意げに説明した。「下着の繊維に反応する特殊なセンサーを搭載していて、不自然な動きをしている下着を検知できるの」


「へえ、すごいな」ケンジは感心した様子で言った。「でも、そんなの本当に作れるの?」


「もちろん!」ユイは自信満々に胸を張った。「…まあ、正確には『人が不自然に持ち運んでいる衣類』を検知するんだけどね。下着専用ではないわ」


「やっぱり」ハジメはクスリと笑った。


「でも十分役立つわ」ユイは少しむくれながらも、装置を廊下に設置し始めた。「これを学校の主要な出入り口に置いておけば、不審な動きを検知できるはず」


その日の午前中、授業は通常通り進み、特に不審な点は見つからなかった。しかし、昼休みになった直後、ユイのタブレットがアラートを発した。


「反応があったわ!」ユイは急いでタブレットを確認した。「西側の非常口から何かが出ていったみたい!」


三人は急いで西側の非常口に向かった。そこには確かに扉が少し開いており、外に出た形跡があった。


「追いかけよう!」ハジメが先頭に立って外に飛び出した。


校舎の裏手に回ると、フェンスの向こうに一人の男性が何かの袋を持って歩いているのが見えた。


「あれだ!」ケンジが指さした。


男性はフード付きのパーカーを深く被り、顔を隠していた。


「待ってください!」ハジメが大声で呼びかけた。


男性は振り返り、子どもたちの姿を見ると、急に走り出した。


「逃げた!」ケンジが叫んだ。


「追いかけましょう!」ユイが言った。「でも学校の外だから、校長先生に通報も!」


ハジメは急いで携帯電話を取り出し、校長先生に状況を報告した。そして三人は、安全な距離を保ちながら男性を追跡した。


男性は住宅街へと逃げ込み、いくつかの曲がり角を曲がった後、古い倉庫のような建物に入っていった。


「あの倉庫…」ケンジが息を切らしながら言った。「廃業した清掃会社の倉庫だよ」


「隠れ家かもしれないわ」ユイは警戒した様子で言った。


「警察と校長先生が来るまで、ここで待機しよう」ハジメは決断した。「でも、様子だけは見ておこう」


三人は倉庫に近づき、窓から中を覗き見た。中では数人の男性が集まって、何やら話し合っている様子だった。そして、床には大量の下着が山積みになっていた。


「やっぱり下着泥棒だ!」ハジメは小声で言った。


「でも、なんだか変じゃない?」ユイが不思議そうに言った。「あれ、仕分けしてるみたい…」


確かに、男性たちは盗んだ下着をサイズや種類ごとに分類し、それぞれ袋に入れている様子だった。


「これは…転売目的?」ケンジが恐る恐る推測した。


「可能性は高いわね」ユイが冷静に分析した。「海外では下着の転売が利益を生むこともあるって聞いたことがあるわ」


その時、倉庫の反対側から騒ぎが起きた。


「なんだ?」ハジメが身を乗り出した。


倉庫の裏口から、今度は別のグループが侵入してきた。彼らは全員フルフェイスのマスクをつけ、体に「パンツ解放同盟」と書かれたTシャツを着ていた。


「パンツを解放せよ!」リーダーらしき人物が叫んだ。


「な、なんだお前ら!」下着泥棒グループが驚いた様子で立ち上がった。


「我々はパンツ解放同盟だ!」マスク集団のリーダーが宣言した。「金のために下着を盗む者どもよ、恥を知れ!パンツは自由なのだ!」


「何言ってんだ、このキチガイども!」下着泥棒の一人が怒鳴り返した。「邪魔するな!これは商売なんだよ!」


「商売だと?笑わせる!」パンツ解放同盟のリーダーがさらに声を張り上げた。「我々は人類をパンツという束縛から解放するために活動している!金のためではない!」


「パンツは金になるんだよ!」下着泥棒のリーダーが反論した。


「パンツなど不要だ!」パンツ解放同盟が主張した。


「お互い主張が真逆…」ケンジは呆れた表情で言った。


「でも両方とも、他人の下着を盗んでいるという点では同じよ」ユイが鋭く指摘した。


「どっちもアホかよ…」ハジメはため息をついた。


突然、二つのグループの間で小競り合いが始まった。パンツ解放同盟のメンバーが下着泥棒から袋を奪おうとし、下着泥棒たちはそれを必死で守ろうとしていた。


「これは大変だ!」ハジメが焦った様子で言った。「警察はまだか?」


その時、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。


「来た!」ケンジが安堵の表情を見せた。


サイレンの音に気づいた二つのグループは、突然、争いを止めた。


「警察だ!」下着泥棒のリーダーが叫んだ。


「撤退するぞ!」パンツ解放同盟のリーダーも命令を下した。


両方のグループが慌てて荷物をまとめ、別々の出口から脱出しようとした。


「逃がすな!」ハジメが叫んだ。


「でも、私たちだけでは危険よ!」ユイが制止した。


そのとき、倉庫の前に一台の車が停まり、桐山先生が飛び出してきた。


「子どもたち、危険だから近づかないで!」彼女は急いで三人の元に駆け寄った。


「桐山先生!」三人は驚いた声を上げた。


「校長先生から連絡を受けたの」桐山先生は説明した。「すぐに来たけど…あら?」


彼女は倉庫の中を覗き、二つのグループが逃げ出そうとしている様子を見た。


「あの人たちが犯人です!」ハジメが説明した。「下着泥棒と、パンツ解放同盟という変な集団が争っていたんです!」


「わかったわ」桐山先生は冷静に言った。彼女はポケットから何かを取り出した。それは小さなホイッスルだった。


桐山先生がホイッスルを吹くと、驚くほど大きな音が響き渡った。それは普通のホイッスルの音ではなく、甲高い電子音のようなものだった。


その音に、逃げようとしていた二つのグループのメンバーたちが一瞬動きを止めた。その隙に、複数の警察車両が倉庫を取り囲み、警官たちが飛び出してきた。


「動くな!警察だ!」


下着泥棒とパンツ解放同盟のメンバーたちは、あっという間に警官たちに取り囲まれた。


「桐山先生、あのホイッスル…」ハジメが驚いた様子で言った。


「これは特殊な音を出す防犯ホイッスルよ」桐山先生は微笑んだ。「一時的に相手の思考を乱す効果があるの。私が警察にいた頃に開発されたものよ」


「さすが桐山先生!」ケンジは目を輝かせた。


警察の取り調べが始まり、両方のグループのメンバーが次々と連行されていった。驚いたことに、下着泥棒グループのリーダーは、地元の中古衣料品店の経営者だった。そして、パンツ解放同盟のリーダーは、過激な環境保護団体のメンバーだったという。


「なんだかすごく複雑な事件になってきたわね」ユイはタブレットにメモを取りながら言った。


「でも、これで学校の下着泥棒事件も解決するよね?」ケンジが希望を込めて言った。


「いや…」ハジメは真剣な表情で言った。「なんだか引っかかるんだよな」


「どういうこと?」ユイが尋ねた。


「この二つのグループは下着泥棒をしてたのは間違いないけど…」ハジメは眉をひそめた。「学校の中に入れるかな?特に昼間に」


「確かに…」桐山先生も考え込むように言った。「彼らはみんな大人だし、不審者が学校に入ったら、すぐに気づかれるはずよ」


「じゃあ、学校の下着を盗んだのは別人?」ケンジが不安そうに言った。


「それとも…」ユイの目が少し開いた。「内部犯…?」


四人は顔を見合わせた。事件はまだ完全には解決していないようだった。


## 第三章:意外な真実


翌日、学校では下着泥棒グループの摘発のニュースで持ちきりだった。しかし、露出魔退治クラブの三人は、まだ油断していなかった。


「学校内の犯人がいるとすれば、生徒か教職員か…」昼休み、秘密基地で作戦会議をしているハジメが言った。


「でも、誰がそんなことを?」ケンジは首を傾げた。「下着泥棒のリーダーは転売目的だったし、パンツ解放同盟は変な思想で動いてたけど…」


「第三の勢力?」ユイは考え込みながら提案した。


「三つ目の集団がいるのか?」ハジメも眉をひそめた。「ますます複雑になってきたな…」


その時、タブレットからアラート音が鳴った。


「また反応が!」ユイは急いで確認した。「今度は東側の階段付近よ!」


三人は急いで東側の階段に向かった。そこには誰もいなかったが、ちょうど屋上へと続く扉が少し開いていた。


「屋上だ!」ハジメが先頭に立って階段を駆け上がった。


屋上のドアを開けると、一人の少年が手に何かを持ち、フェンスの近くに立っていた。


「あれ…田中?」ハジメは驚いた声を上げた。


振り返ったのは、温泉旅行で同じ部屋だった田中くんだった。彼の手には何枚かの下着が握られていた。


「ハ、ハジメ…」田中くんは驚きと恐怖が入り混じった表情になった。


「田中くん、何してるの?」ユイが恐る恐る尋ねた。


「これは…その…」田中くんは言葉に詰まった。


「もしかして、学校の下着を盗んだのは君?」ケンジが信じられない表情で言った。


田中くんは顔を真っ赤にして、うつむいた。


「どうして…?」ハジメが真剣な表情で尋ねた。


「だって…」田中くんは小さな声で言い始めた。「僕も露出魔退治クラブに入りたかったんだ!」


「え?」三人は驚いた顔をした。


「温泉旅行で、君たちがすごくかっこよかったから」田中くんは続けた。「でも、なかなか入れてくれないから…自分で事件を作って、それを解決すれば認めてもらえると思って…」


「自分で事件を…?」ハジメは呆れた顔をした。


「うん…」田中くんは申し訳なさそうな表情で説明し始めた。「最初は、町で下着泥棒が続いているって聞いて、それを調査するような真似事をするつもりだったんだ。でも、君たちの関心を引けなくて…それで…」


「それで学校の下着を盗んだの?」ユイが厳しい表情で尋ねた。


「うん…」田中くんはうなだれた。「でも、盗んだのは自分の下着だけだよ!他の子のは触ってない!自分のを何枚か持ってきて、なくなったように見せかけたんだ…」


「え?」三人は驚いた。


「でも、女子のロッカーからもなくなったって…」ケンジが混乱した様子で言った。


「それは…」田中くんは困った表情で説明した。「僕が『下着がなくなった』って言い始めたら、他の子も『私もなくなった』って言い出したんだ。でも、実際はなくなってないと思う…みんな、騒ぎに便乗しただけで…」


「集団ヒステリー…」ユイが呟いた。「一人が言い出すと、みんなが同調してしまう現象ね」


「つまり、学校の下着泥棒事件は…存在してなかったってこと?」ハジメは頭を抱えた。


「ごめんなさい…」田中くんは涙目になった。「僕、露出魔退治クラブに入りたくて…」


三人は顔を見合わせた。怒るべきか、呆れるべきか、複雑な気持ちだった。


「田中くん」ハジメが一歩前に出て、真剣な表情で言った。「露出魔退治クラブは、他の人を困らせるようなことはしないんだ。僕たちは人々を守るために活動してるんだよ」


「わかってる…」田中くんはうなだれた。「僕が間違ってた…」


「でも、君の行動のおかげで、本物の下着泥棒グループとパンツ解放同盟を捕まえることができたんだよ」ケンジが優しく言った。


「え?」田中くんは顔を上げた。


「そうね」ユイも頷いた。「たとえ動機が間違っていても、結果として街の安全に貢献したことは確かよ」


「ただ、こういう偽の事件を起こすのはダメだってことをしっかり反省してほしい」ハジメはきっぱりと言った。


「はい…本当にごめんなさい」田中くんは深く頭を下げた。


「さあ、まずはその下着を元に戻そう」ハジメは微笑んだ。「そして、校長先生に正直に話すんだ」


「えっ、校長先生に!?」田中くんは青ざめた。


「もちろんだよ」ハジメは真剣な表情で言った。「嘘をついたり、みんなを心配させたりしたことは、ちゃんと謝らなきゃいけないよ」


「そ、そうだよね…」田中くんは覚悟を決めたように頷いた。


四人は屋上を後にし、校長室へと向かった。


校長先生の前で、田中くんは震える声で全てを告白した。学校の下着泥棒事件が自作自演だったこと、露出魔退治クラブに入りたかったこと、全てを正直に話した。


校長先生は最初、厳しい表情で田中くんの話を聞いていたが、最後には少し柔らかな表情になった。


「田中くん、他の人を不安にさせるような行動は絶対にしてはいけないよ」校長先生は静かに諭した。「でも、正直に話してくれたことは評価する。明日の朝礼で、みんなに謝罪してほしい」


「はい…」田中くんは小さな声で答えた。


「それと、一週間の放課後清掃当番もお願いするよ」校長先生は付け加えた。


「はい、わかりました」田中くんはしっかりと頷いた。


校長室を出た後、田中くんはハジメたちに深く頭を下げた。


「本当にごめんなさい。迷惑をかけました」


「もう二度とこんなことはしないでね」ハジメは優しく言った。


「うん…」田中くんは頷いた後、少し恥ずかしそうに言った。「それでも、僕、露出魔退治クラブに興味があるんだ。いつか正式に入れてくれないかな…」


三人は顔を見合わせた。


「それは…まず、君が本当に反省して、人々を守りたいという気持ちを行動で示してからね」ハジメはニヤリと微笑んだ。


「がんばる!」田中くんの顔に笑顔が戻った。


そして翌日、全校朝礼で田中くんは自分の行動を謝罪した。意外なことに、女子ロッカーから下着がなくなったと言っていた子たちも、実は本当はなくなっていなかったと次々に告白した。全てが集団心理で起きた騒動だったのだ。


一方、町内の本物の下着泥棒と「パンツ解放同盟」のメンバーは全員逮捕され、彼らが盗んだ下着は持ち主に返却された。


下着泥棒のリーダーは「海外に高く売れる」と主張し、パンツ解放同盟は「人類をパンツという束縛から解放するため」という奇妙なイデオロギーを掲げていたが、どちらも結局は他人の財産を奪う犯罪行為だった。


「どっちもアホだったね」放課後の秘密基地で、ハジメはため息をついた。


「でも、田中くんの行動は…」ケンジは言いよどんだ。


「彼なりに、私たちに認められたかったのよ」ユイは優しく言った。「方法は間違ってたけど、気持ちはわかるわ」


「うん」ハジメも頷いた。「彼がちゃんと反省して、本当の意味で人のためになることをしたいって思ってくれたら、いつか仲間にしてもいいかもね」


「そうだね!」ケンジも明るく同意した。「露出魔退治クラブ、新メンバー候補だね!」


三人は笑いながら、今回の騒動を振り返った。学校の下着泥棒事件は自作自演だったが、それをきっかけに本物の犯罪グループを捕まえることができた。皮肉な結果だったが、街の平和は守られたのだ。


「さて、次はどんな事件が待ってるかな?」ハジメは空を見上げながら言った。


「またすぐに何か起きそうな予感がするわ」ユイはタブレットを操作しながら言った。「この街、なぜか露出関係の事件が多いもの」


「でも大丈夫!」ケンジは元気よく言った。「露出魔退治クラブがいる限り、安心して過ごせるよ!」


三人は笑顔で拳を合わせた。今回の事件も、無事に解決したのだった。


## エピローグ:桐山先生の冷や汗


夕暮れ時、保健室で桐山先生は校長先生とお茶を飲みながら、今回の事件について話していた。


「まさか、田中くんの自作自演だったとは…」校長先生はため息をついた。「子どもの考えることは予想できませんね」


「でも、露出魔退治クラブに入りたいという純粋な気持ちからの行動だったわね」桐山先生は微笑んだ。「彼らに憧れる子がいるってことは、彼らの活動が認められている証拠よ」


「そうですね」校長先生も頷いた。「あの子たちは本当に頼もしい。今回も、結果的に町の犯罪者を捕まえることができたわけですから」


「しかし」桐山先生は少し表情を曇らせた。「『パンツ解放同盟』って…最近の過激派は主張が奇想天外すぎますね」


「確かに」校長先生は苦笑いした。「『パンツは自由だ』と『パンツは金になる』…どちらも異常な発想です」


「でも、私が一番驚いたのは」桐山先生はそっと声を潜めた。「あの『パンツ解放同盟』のリーダー、実は私が警察時代に逮捕した男性だったんです」


「え?」校長先生は驚いた顔をした。


「ええ」桐山先生は頷いた。「二十年前、私が新人警官だった頃、公園での露出行為で逮捕した人物です。その時は『服は社会の抑圧の象徴だ』と主張していて…」


「まさか…」校長先生は目を丸くした。「あのレインボーマンとも関係が?」


「関連性を調査中です」桐山先生は静かに言った。「どうやら、この街には『脱ぎたがる人々』のネットワークが昔から存在しているようなんです」


「なんと…」校長先生は頭を抱えた。「次は何が起きるやら…」


「次ですか?」桐山先生は少し考え込むように言った。「そういえば、中央公園にある健康器具広場に、最近『全裸筋トレおじさん』が出没しているという噂を聞きましたよ…」


「え?全裸で筋トレ!?」校長先生は驚きのあまり、お茶をこぼしそうになった。


「まだ確認情報ではないんですが…」桐山先生はクスリと笑った。「『肉体美に服は邪魔』とか言ってるらしいですよ」


「また始まるのですね…」校長先生は深いため息をついた。「露出魔退治クラブの出番が」


「ええ」桐山先生は窓の外の夕焼けを見つめながら言った。「この街の平和は、ハジメたちが守ってくれるでしょう。タオル一枚で正義を貫く彼らなら…」


二人は顔を見合わせて笑った。窓の外では、下校途中のハジメたちが校門を出ていくところだった。


明日もまた、新たな冒険が彼らを待っているのかもしれない。


**――次回予告――**


「中央公園に謎の筋肉おじさん出現!?」


「マッスル!マッスル!服を脱ぎ捨てて筋肉アピール!?」


「意外な正体に、ハジメの心が揺れる!?」


露出魔退治クラブVS全裸筋トレおじさん!肉体美は芸術か迷惑か、境界線を探る熱き戦い!


次回「全裸筋トレおじさんと筋肉の誓い」お楽しみに!

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