【2】 お話の前に

【美香】

 さて、本題に入る前に、ソフィアのご家庭のバックグラウンドみたいなものから聞かせてもらうわね。


 ソフィアのお父さんは、イタリアで有名なピア活動団体「グルッポ・センチメンターレ(Gruppo SentiMENTALe)」の代表でいらっしゃるのよね?



【ソフィア】

 そうね。でも父はもう年老いてるから、今、私の弟に事業を引き継ごうとしてるの。



【美香】

 そうなのね。確か弟さん、アレッサンドロさんだったかしら? 弟さん、長い間、日本にピア活動の研究に来ていらしてたわよね?



【ソフィア】

 うん。10代のころからね。それもこれも、父の事業を引き継ぐために、弟が自主的に志願したことだったのよ。



【美香】

 10代でだなんて! すごいわね!


 ソフィアは幼い時に、ピア活動には興味なかったの?



【ソフィア】

 さすがに10代ではなかったわね。私が発症したのは20代になってからだったし。でも父のやってることへの尊敬の気持ちは、ずっとあったわよ。



【美香】

 そうなのね。その尊敬すべきお父様の事業を引き継ごうとしておられる、弟さんに対してはどう思ってるのかしら?



【ソフィア】

 父と同様、尊敬のまなざしね。残念ながら、私にはそんな立派な動機で自分の人生を生きることはできないわ。



【美香】

 でも、ソフィアだって、何か強い志をもって、今の郵便局員の仕事をやっているわけでしょ。すごいじゃない!



【ソフィア】

 ありがとう。


 そうね。私は私なりに信念をもって頑張っているつもりよ。大事な郵便物をお預かりしてるという使命感もあるわね。



【美香】

 そうよね。あなたたちきょうだいは、お父様同様、ふたりとも尊敬に値する人よ。誇りをもって生きてちょうだいね。



【ソフィア】

 ありがとう。わかったわ。






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