子どもだけで電車に乗ってはいけない

西しまこ

GPS

 明け方、なぜか目が覚めて(たぶん9時くらいに寝ちゃったから笑)、

ふとXったーを見ると

「GPSを見たら、娘が電車に乗って出かけていることが分かった。ショックだ。子どもだけで電車に乗ってはいけない学校の決まりもあるのに。電話にも出ない」

みたいな書き込みを見てしまいました。小学5年生の女の子みたいです。

「怒りを出してはいけない。だけど、話すときどうしても怒りが出てしまった」

 みたいなことも書いてありました。

 

 衝撃を感じました。

 なぜなら、わたしはそんなことで腹を立てたことはないので。

 そもそも「子どもだけで電車に乗って出かけてはいけない」学校の決まりにもびっくりです。交通系ICカード、高学年ならほとんど持っています。低学年だって、持っている子は持っていると思います。だから、この書き込みは随分田舎の地域のことであろうなあ、と想像しました。地域によって、決まりも随分違うんですね。


 思い返せば、小学校低学年から、子どもだけで電車に乗ることはあったように思います。低学年のときはさすがに心配で、「現地に着いたら連絡してね」ということはあった気がします。

 でも、五年生だったら、そこまで心配はしていませんでした。

 そもそも、習い事で一人で電車に乗って出かけていたので(そしてそういう子は多い)、「子どもだけで電車に乗って出かけてはいけない」なんてありえないのです。全部現地まで、親が送り迎えするなんて不可能です。わたしの身体は一つしかありません。わたしは放課後の時間帯は在宅仕事をしているし、子どもは二人いるので、現地まで全部送り迎えするのは物理的に不可能でした。出来ることは自分でやってもらっていました。ワンオペってそういうことです。


 ところで、GPS。

 みなさん、そんなに、GPSで子どもの居場所を確認するんですね。

 わたしは、低学年の長男が帰って来なかったときは見ましたが、高学年になってからは一度もGPSで彼らの居場所を確認したことはありません。次男に関しては一度もないかも。

 でも確かに、中学生になっても高校生になっても、子どもの居場所をGPSで確認している親がいるのは知っています。

「子どもは嫌じゃないのかな?」と母親に訊いてみると、「慣れているからいいみたい」とのこと。

 へえ、と思ったのを覚えています。

 わたしはGPSで居場所を見られていたら嫌だなあ。

「A駅で長くいたけど、何していたの?」などと訊かれたら、心を閉ざします。別にたいしたことをしているわけではないけれど、そんなふうに土足で踏み込んでくるような行動が嫌なのです。


 そんな気持ちもあり、元来モノグサだっていうのもあり、GPSで居場所確認しないまま、彼らは大きくなりました。

 

 中学生以降、彼らは自由にどこへでも行きます。

 小学生のときは詳しく色々話してくれた長男も、中学生になったら、あまりあれこれ話さなくなりました。次男はもともと秘密主義なので、友だちの名前は教えてくれません。

 でもそれでいいかなと思って過ぎてしまいました。

 親子の会話がないわけでもなく、とても仲良しだとも思うし、 悪いことをしていないとも確信しているし、犯罪に巻き込まれるような事態になっていないので大丈夫です。勘ですが!


 Xったーの投稿の話に戻りますと、わたしは、この女の子はそもそも「いい子」だったんだな、と思いました。

 もともと、親の言うことを聞くいい子。勉強も運動も出来るし、宿題もやる。そんないい子だったのでしょう。今まで言いつけを破ったことはあまりなかったのかもしれません。

 我が家に「いい子」はいませんでした。

 いろいろ問題ばかりあり、もうほとんど「生きているからいいや」という悟りを開くほどです。長男に手がかかったため、次男は「学校に行っていて、偉いよねえ」と毎日褒められていました。今でも褒めています。

 だから、息子が内緒でどこかに友だちと遠出していると知ったら、むしろ嬉しく思ったかもしれません。やるじゃん! と。犯罪に巻き込まれず無事に帰って来れば、それでいいじゃないですか。


 息子たちはネットで知り合った人と会ったこともあるようです。

 それもいいことだと思うんです。

 だって、わたしだって会うし、だいたいは大丈夫だから。

「危ないと思ったら、逃げるんだよ! お金を要求されたり身分証を見せてと言われたり、はたまた宗教に勧誘されたら、即行逃げて!」

 大事なことだからそのように言ってみましたが、「ばかじゃないの?」と一笑に付されました。

 そうです。

 そもそも、彼らの「人を見る目」も信じてあげなくてはいけません。

 どんな人だったか、教えてくれることもあります。

 もちろん、わたしからは訊きません。

 話したくなったときに話してくれる感じです。


 わたしは、子どもとはいえ、わたしとは違う人間だから、心の中っていうのは、その子自身のものだと考えています。

 もちろん、心配はします。危険は避けて欲しい、出来るだけ。

 だけどやはり、むやみに立ち入るわけにはいかないし、そもそもコントロールしたりは不可能だと思っているのです。子どもの全てを把握するのも不可能です。

 しかし、どうもわたしがゆるいことは間違いがないです。周りのママたちに比べて、なんだかゆるい。Xったーの投稿を見て、つくづくわたしってずれているのかも? などとも思いました。


 そうそう。

「電話も出ない」に関して、わたしは「いやいや。出るわけないいじゃん?」と思いました。彼らは彼らのタイミングで電話に出るのであり、常にサイレントであり、都合が悪いときは無視です。

 ずっとそんなものだと思っておりました。



「子どもだけで電車に乗ってはいけない」

 田舎であっても、やはり理由がよく分からない規則だなあと思います。

 学校の決まり?

 他にどのような細かい決まりがあるのでしょうか。

 意味のない決まりは守らなくていいと思います。

 細かい決まりをいくつ作ったところで、それが守られるとは限りません。或いは、「守ってくれている」と安心するために、ある決まりなのかもしれません。

 子どもがどこに誰と行って何をするのか。

 詳しく知っていると安心するのかもしれません。


 だけど、もしかして嘘をついて安心させているのかもしれないし、わたしは嘘をつかれることの方が嫌だから、子どもを信じて何も聞かないことを選んでいるわけです。

 めんどくさいから放っておいているのではないか、という意見もあるかもしれません。……まあそういう側面もあるでしょう。だって、わたしはわたしの人生を生きているのです。子どもの人生を監視している時間は、あまり(ほとんど)ありません。


 息子たちよ!

 逞しく自分の足で生きていき給え!(結論)


 自由に。

 そう、自由に生きていけばいい。





         了

 

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