第19話 あらすじ
記憶を失った男が廃墟と化した「玻璃(ハリ)の街」で目を覚ます。彼の持ち物は古いライターと「硝子探偵事務所」のバッジのみ。現れた赤いドレスの少女・硝子(ショウコ)は「あなたはこの街の最後の探偵。街を消した事件の真相を解いて」と告げる。
探偵は硝子の導きで街を調査し始める。かつて繁栄していた玻璃の街は、ある夜を境に住人が消え、廃墟となっていた。見つけた手帳は白紙で、街の壁には「探偵は罪人である」という文字が浮かび上がる。硝子は「あなたは私にしか見えない」と語り、彼の存在が「消失の謎」に関わっていることを示唆する。
探偵は夢の中で、かつて連続殺人事件を追っていた自分の姿を見る。被害者たちは「消えるように殺された」と証言者は語り、現場には必ず「鏡の破片」が残されていた。夢の最後には「探偵、お前がすべてを終わらせた」という声が聞こえる。
街の記録を調べると、歴史が「ある日を境に白紙」になっていることに気づく。彼は幼い自分と双子の兄弟の写真を発見する。硝子は「鏡の世界に行けば真実がわかる」と言い、二人は街の地下にある巨大な鏡の扉へと向かう。
鏡の向こう側は「消える前の玻璃の街」だった。しかし住人たちは探偵の姿を見ていない。唯一例外は精神科医の琴音博士で、彼女は「あなたはすでに亡くなったはず」と驚く。探偵は街で「自分そっくりの男」を目撃する。その男は幸せそうに笑い、硝子によく似た少女と談笑していた。
硝子は自らの正体を明かす。「本物の硝子」ではなく、街と探偵の記憶が具現化した存在だった。「私は消えゆく運命だけど、あなたを救いたい」と彼女は告白。その瞬間、街が揺れ、二人は急いで現実世界へ戻る。
探偵は再び鏡の世界に潜入し、琴音博士の協力で事件ファイルを調査する。被害者たちは「鏡の中に閉じ込められ、消された」と記録されていた。決定的な証拠を見つけた瞬間、現実へと引き戻された探偵は、胸に鏡の破片が突き刺さっていることに気づく。
目覚めた探偵に、硝子は「あなたはあと三回、夢を見ることができる。三回のうちに真実を見つけなければ、あなたも私も消えてしまう」と告げる。彼女は「本当の硝子」が探偵にとって特別な存在であり、事件の鍵を握っていたことを明かすが、「なぜ彼女が消されたのかは、私にもわからない」と言う。
二度目の夢で、探偵は犯人の顔を見るが、それは自分自身のようだった。街の人々は彼を恐れていた。しかし鏡に映った瞬間「違う、あれは俺ではない。姿形は同じでも、目つきが違う」と気づく。鏡の中の犯人は「真実を知りたければ、最後の被害者の名を思い出せ」と言う。
最後の被害者は「ショウコ」だった。硝子は真実を語る。「探偵が事件を解決するために、私を消したの」。本物の硝子は探偵の恋人であり同僚だったが、「もう一人の探偵」の存在と計画に気づいてしまい、探偵に真実を告げる前に姿を消した。
三度目の夢で、探偵は真犯人が双子の兄・鏡也(キョウヤ)だと知る。彼は「鏡の力」を操り、人々を消し、最終的には街全体を「鏡の世界」に閉じ込めようとしていた。「お前は全てを忘れたのか、弟よ」という鏡也の言葉で、探偵の記憶の扉が開く。
真実が明かされる—鏡也は七年前に事故で重傷を負い、ショウコの研究で意識だけが救われた。彼は二つの世界の境界にいる存在となった。鏡也は世界を融合させるため七つの「鍵」を集めようとし、ショウコは鏡也を止めるため、自ら「七つ目の鍵」になることを選んだのだ。
探偵は決断を迫られる—鏡也を止め、硝子を救うか、兄の望み通り世界を融合させるか。彼は「自分が鏡の世界に入り、硝子と入れ替わる」と決意する。それは永遠に鏡の中に閉じ込められることを意味していた。
探偵は鏡の世界の中心へと向かい、本物の硝子と対面する。彼女は半透明の姿で「私はあなたの記憶。でも、あなたの罪ではない」と語る。彼女の涙に触れた瞬間、探偵は「自分の中の影」を受け入れ、真の自分を取り戻す。
探偵は「記憶を取り戻し、街を再生させる」道を選ぶ。鏡也と対峙し「お前を許すが、お前とは一つにならない」と宣言する。街は輝きを取り戻し始めるが、探偵自身も消えかけていた。硝子は「私の記憶があなたを救う」と自らの存在を捧げる決断をする。彼女は探偵の中へと溶け込み、最後に「私があなたを愛したのは、記憶だけじゃない」と告げる。
玻璃の街は蘇った。半身が鏡のように透明になった探偵カガミは「硝子探偵事務所」を再開する。彼は透明な半身で鏡の世界を覗くことができるようになり、時折鏡也の姿を見ることもあった。
ある夜、彼の事務所の机に古い鏡が置かれているのを発見する。そこに映るのは硝子の姿。「私はあなたの内側に生き続けています」と彼女は語る。
カガミは決意する—この半透明の身体で生きる限り、彼は二つの世界の橋渡しとなり、いつか硝子と再会する日まで探偵であり続けると。
硝子の探偵と消えた街 ソコニ @mi33x
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