第5話:リアリティ
10)リアリティ
小説におけるリアリティとは小説設定内でのリアリティになります。が、読者がもつ現代社会の知識や常識に影響されたリアリティもフィルターとして掛かってきますので、注意する必要が出てきます。
リアリティが欠如した小説の何が問題かというと、稚拙に見えるという一点に尽きます。読者の精神年齢や人生経験によって基準は変動しますが、社会人経験者が違和感を覚えないレベルを意識しておけば問題はそうそう起こらないと言えます。
では具体的にどのような小説がリアリティがないと言えるのかというと、よく見かけるのですが、たとえば貨幣の単位で鉄貨100枚で銅貨1枚、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金1枚貨といった貨幣交換レートが何の説明もなしに提示されると、筆者は「あり得ねぇ」と感じてその小説からブラバします。
何が問題なのかは懸命な作者様は解ると思いますが、まず金属貨幣の価値が多少大きさが変わろうとそんなに奇麗に100倍づつ上昇するわけないということ。次に100倍という上昇率大きさで、ここで挙げた例なら鉄貨から白金貨までに1億倍にまで上昇するというのは、とてもじゃないが現実的ではないと思えてしまうことです。
仮に鉄貨一枚が1円と置き換えれば、白金貨一枚が1億円になってしまいます。ハイパーインフレを起こしでもしないかぎり、こんなぶっ飛んだ価値の貨幣が流通するなんて考えられないし、たとえ白金貨が存在しないとしても金貨一枚100万円なんて考えられません。
こんなあり得ない貨幣設定をするということは、そのほかの設定も現実的ではない可能性が高く、先を読む気が削がれてしまうというのが筆者の考えです。
もう一つ例を挙げてみますと、設定の項目でも申しましたが、主人公がたとえば「リバーシ」を開発したと言って得意げに貴族や商会で働く商人にプレゼンをし、「すばらしい」と絶賛され、権利を売って大儲けするというシナリオが出てくると、筆者は「そんなバカな」と絶句してブラバしてしまいます。
理由は三つあって、まずは実績も何もないぽっと出の
万に一つとして、その世界で「リバーシ」が似た前例がなく画期的な素晴らしい発明であったとしても、海千山千であるはずの貴族や商人ならば、何の実績も知名度も社会的地位もない一般人の主人公を、騙すあるいは力づくでその権利を奪い取ろうとするのが現実的であろうし、もしそんなことが起こり得ない底抜けに優しい貴族や商人が存在する世界設定であるならば、それは主人公上げ&周囲のキャラ下げを多用するつまらない作品になってしまうわけです。
そんなことは気にしないという読者の方も多いですが、一定数の読者は必ず脱落するわけで、★の取りこぼしをできるだけ少なくすることを望むならば、リアリティにはとことんこだわった方が良いということになります。
そんなこと言っても、上の二つが存在する設定で★をたくさん取って(小説家になろうならPtをたくさん取って)書籍化された作品は多いよと思う方もいるかもしれませんが、本論では無名の作家が★の取りこぼしを少しでも減らすということを重要視しているので、このような実例をあえて紹介していることを分かっていただけたら幸いです。
もうすこし例を提示しておきます。
たとえば主人公が新機能を持った、あるいはまったく新機軸の道具や機械、魔道具なんかを短期間で開発し、なんのトラブルも起こさずに爆売れし。いとも簡単に人を集めて量産化するようなエピソードが多々見受けられます。
製品レベルのものづくりに携わった経験がある方なら解ると思いますが、そんな夢物語のようなことは現実では起こり得ません。ほとんどの場合製品レベルの開発には問題が起こってその解決に時間がかかりますし、発売後にも想定外の使い方をされたり、想定外の問題が起こったりしてクレームが来ますし、量産化するにしても生産工程で絶え間なく問題が発生し、その解決に悪戦苦闘するのが普通なのです。
有名大学を卒業し、社会人になって充分に実績を積んだ優秀なエンジニアでさえ、そういった問題に直面するのは当たり前なことですから、いくら魔法が使える世界であったとしても、製品レベルのものづくりにおいてそんなに簡単に上手くいくことは無いと思った方がいいです。
そのほかにもリアリティを損なう実例は枚挙にいとまがありませんが、可能な限りリアリティが無いエピソードを減らしていく努力は、★を獲得する上でも、さらには商業出版を狙う上でも、アニメ化されて酷評されないためにも、行っていく価値があると筆者は思っています。
まぁ商業出版やアニメ化は、★を獲得することとは直接関係ないし、高望みしすぎなので気にしないでください。
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