第3話「自由血闘」

「両者、かけるものは全財産!


52連勝!無敵なガキに挑むのは!


まろうど討伐の元英雄!


自由血闘ワイルド・デュエルに違法なし!


欲のために、いざ挑まん!」




亭主が開戦の合図の戦歌を叫ぶと、観衆は再び声援を送る。


「両者、つけ!知っての通り、自由血闘ワイルド・デュエルに禁止行為は一切ない!

相手を殺しちまったとしても、これ、『蘇りの石』があるから心配すんな!

自分のや武器を十分に活かして、戦いに挑んでくれ!」


亭主がルール(と、言ってもほとんどないが)を説明すると、会場は一時的に静かになる。


「位置について、用意、始め!」


待ってましたというように、民衆は再び声援を送る。


「ギャハハ!歯ァ食いしばれェ!」


モヒカンがいち早く動き出した。殴るようなそぶりを見せている。


(素手か…?いや、。)


「っと!っぶねェ!」


朔が避けたところには斧のような武器が地面にめり込んでいた。


「へェ。透明武器クラルテ・ウェポンか!初めて見た!」 


透明武器クラルテ・ウェポン。衝撃が来るまで、武器自体が透明。

当たるまで気づかないことも多い。


「おい!モヒカン!卑怯だぞ!」

「朔ーーー!ぶちかませェェ!!」


観衆ははち切れんばかりに声を上げている。


「ほう。ガキ。これを知っているのか。」


モヒカンが感心したようにいう。


「まァな。俺はここで何年も荒稼ぎしてんだ。武器に関しては特に詳しいぜ?」

「ギャハハ!笑わせんな!お前みたいなチビがか!何回死んだんだ⁉︎」

「…てめェ。誰がミジンコだって?」


何気に気にしているとこを突かれ、朔の空気は一変した。


「は?ミジンコ?」


モヒカンは何を言っているのか、わからない、という顔だ。


「っらァ!」


瞬間、モヒカンが遠くに吹き飛び、店の壁にめり込んだ。


「ごふっ。」


血を吐いている。


「あ、やべ!つい加減まちがっちまった!」


「!?」


「わぁぁぁぁ!朔ーーー!!」

「よくやったァ!!」

「こっちむいてェー!」

「またワンパンかよ!」


一瞬の沈黙ののち、観衆は再び盛り上がった。


「よしよし。決着がついたみてェだな。」


亭主が再び決闘場に上がってくる。


挑戦者チャレンジャー戦闘不能!よって、勝者、朔!」


酒場の店員である元僧侶に治療を施してもらいながら、モヒカンはまだ呆けた顔をしている。


そんなこんなで、朔は晦に言われた忠告はどこへやら、53連勝を更新した。


___


「…いつの間に。」


マントを被った少女が呟いた。


「どういうことだ?『創造神の落とし子クレアトーレ』って…」

「嬢ちゃんたち、昨日来てた人だろ。」


青年が言いかけた時、マントの2人に亭主が声をかけた。


「ああ、亭主さん。昨日ぶりです。」


青年は礼儀正しくお辞儀した。


つえぇだろ。あいつ。」

「そうですね。今見た限りだと、戦いなれているような。」

「その様子だと、あいつが今何したのかわかってるみてェだな。」


亭主は少女の方を特に見て話した。


「…まァ。」

「なんか聞きてェことがあんなら、あんたたちも出るか?自由血闘ワイルド・デュエル。」


にやり、と、いたづらを思いついた少年のような瞳で、亭主が2人を見る。


「はは…。それはちょっと」


青年の声を遮って少女が答えた。


「出る。」

「え⁉︎千鶴ちづるさん⁉︎⁇」

「私も、自由血闘ワイルド・デュエル、やってみたい。」

「…ちょっと失礼して。」


青年が勢いよく少女の腕を掴み、コソコソと話した。


「千鶴さん⁉︎何言ってるんですか⁉︎」

「だって、多分『創造神の落とし子』クレアトーレってあの子。」

「それは俺も思いましたけど、だからってなんで千鶴さんが出ることになるんですか。」

「…確証を得るために確かめることは必要だヨ。」

「嘘つけ!顔ニヤけてるぞ。」


千鶴と呼ばれたマントの少女は輝く黄金の眼をより一層キラキラさせている。


「どうだい、嬢ちゃん。やってみるか?」

「うん。」

「亭主さん!困ります!」

「んでも、嬢ちゃんはやりたがってるぜ?」

「っ2人して…!」

ふみ、あとは任せた。」


そういうと、千鶴はマントのまま、亭主の後についていった。


「……この戦闘狂め!」


残された青年_ふみ_は、諦めたように悪態をついた。




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