第2話
賑やかな喧騒の、さらにその中心へ、朔は慣れた足取りで中心街_桃源郷_のさらに中心にある酒場、「黒猫の尻尾亭」に踏み込んだ。
「よう!クソガキ!また来たんかお
店の中に入ると、眼帯をつけた屈強な亭主が威勢の良い声で呼びかけた。
「よう!おっちゃん!今日も来たぜ!挑戦者はいるか?」
店主に受け応えながら、いつものようにカウンター席につく。
「それがな、昨日、お
「俺のこと?」
「んだ。小柄な嬢ちゃんと、
サービスのバタービールを飲みながら、今朝の晦の言葉を思い出す。
(危ない奴…。まさかな。)
「お、来たぜ。
反射的に店の入り口を見ると、亭主の話とは無縁な屈強なモヒカン野郎が口の端を釣り上げて俺を見ていた。
「ハッ!こんな弱そうな奴が
「よう。アセリア。こいつは見た目によらず強敵だぜ?」
おっちゃんが挨拶がわりにアセリアと呼ばれたモヒカンの肩を叩く。
「んで、何を望む?」
ここ、桃源郷の男たちの楽しみ。血闘相手から自らが望むものを賭けさせ、名誉のため、血闘に挑む。
各地の酒場で行われているが、中でも朔が入り浸っている「黒猫の尻尾亭」は一段と派手で、人が多く集まっている。
「そーだなァ。こんな小せェガキから奪うのは可哀想だが…」
全くそう思っていないような口調である。相変わらずニヤニヤとした気持ちの悪い笑みだ。
「お前の全財産。」
どっと人だかりが湧く。
「こんなガキ相手に卑怯だぞ!」
「いけ!やっちまえ!」
「朔ー!ぶちかませ!」
騒がしくなる会場に亭主が静かにさせる。
「んで、朔!お前は何を望む?」
ニッカリ笑って問いかける。
「んー。そーだな。そいつが俺の全財産が欲しいってんなら、俺はそいつの全財産が欲しい。」
再び会場は盛り上がる。
「おーい静かにしろ!んじゃ、2人とも店の裏の決闘場に行け。」
流石に店の中じゃ損害が大きすぎるので、多くの店では裏に決闘場が設けられている。
もちろん違法に、だが。
選手たちが移動するのに合わせ、観衆も続々と移動する。
観衆のほとんどが、冒険者をやっているような人々や、娯楽を求めた金遣いの荒い人々だ。
そんな空気に2人、風変わりな少女と青年が。
2人ともマントを纏い、顔が見えないようになっている。
「
青年の方はあまり血闘に関心がないようだ。
「うん。私が見つける。」
マントの陰で、少女の瞳がきらりと光った。
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