第3話 初めてのダンジョン

「よし……!」

 

俺は小さな剣を腰に差し、街の外れにあるFランクダンジョンへと向かっていた。

 

初心者向けのダンジョンとして知られるこの場所には、スライムやゴブリンといった弱いモンスターしか出現しない。

それでも、今の俺には十分すぎる脅威だ。

 

なにせ、ステータスが一般の冒険者の半分以下なのだから。

 

「本当に、こんな俺が戦えるのか……?」

 

不安が募るが、やるしかない。

俺は震える手を抑えながら、ダンジョンの入り口へ足を踏み入れた。


最弱ステータスでの戦い

 

ダンジョン内は暗く、ひんやりとしていた。

 

壁には淡く光る鉱石が埋め込まれており、かろうじて視界は確保できる。

静まり返った通路を進んでいくと、ぬるりとした音とともにスライムが現れた。

 

「っ……!」

 

【スライム】

HP:15

攻撃力:3

防御力:2

 

スライムの攻撃力はたったの3。

しかし、俺の防御力は3しかないため——

 

普通にダメージを受ける。

 

「やるしかない!」

 

俺は剣を握りしめ、スライムへと突進した。

 

ザシュッ!

 

「……硬い!?」

 

斬った感触がほとんどない。

スライムの柔らかい体は衝撃を吸収し、剣が深く刺さらない。

 

「くそっ……!」

 

焦る俺に、スライムが反撃してきた。

 

ボフッ!

 

粘液を飛ばしながら跳びかかってくるスライム。

俺は慌てて後ろへ飛び退いたが、足がもつれて転倒した。

 

「うわっ……!」

 

転んだ俺に、スライムが覆いかぶさるように押し寄せる。

じわじわと締め付けるような感覚が全身を襲い、息が詰まる。

 

「やばい……!」

 

力を振り絞り、剣を振るう。

何度も何度も、無我夢中で斬りつけた。

 

そして——

 

スライムの体が崩れ、溶けるように消えた。

 

「はぁ、はぁ……っ!」

 

辛くも勝利したものの、疲労感がすさまじい。

たった一体のスライム相手に、ここまで苦戦するとは……。

 

「これじゃ、先が思いやられるな……。」

 

俺は汗を拭いながら、スライムが落とした魔石を拾った。

これが冒険者の貴重な収入源になる。

 

「とりあえず、もう少し戦ってみるか……。」

 

そうして俺は、慎重にダンジョンの奥へと進んだ。


 

それから俺は、時間をかけてスライムを数体撃破した。

 

一戦ごとに疲労し、ギリギリの戦いを強いられたが、なんとか経験値を稼ぐことはできた。

 

そしてついに——

 

【レベルアップ!】

 

「……お?」

 

突然、体が温かくなり、力が漲る感覚がした。

どうやらレベルが上がったらしい。

 

俺は慌ててステータスカードを確認した。


【黒瀬 悠真】(Lv.2)

HP:18(+8)

MP:10(+5)

攻撃力:5(+3)

防御力:6(+3)

敏捷性:8(+4)

魔力:6(+3)

 

スキルポイント:8


「えっ、めっちゃ上がってる……!?」

 

俺は目を疑った。

 

レベル1の時と比べ、ステータスの上昇幅が明らかに大きい。

普通の冒険者なら、レベルアップごとに各ステータスが1〜3程度上昇するのが一般的だ。

だが、俺はそれをはるかに上回るペースで成長していた。

 

「もしかして、俺のスキル……とんでもなく強いんじゃ……?」

 

経験値10倍というデメリットばかりに目を向けていたが、その分得られる成長幅が異常なのかもしれない。

 

スキルポイントも、普通の冒険者が1レベルごとに4しか得られないのに対し、俺は倍の8ポイントを獲得していた。

 

「……これなら、やれる!」

 

俺は一筋の希望を見出し、さらにダンジョンの攻略を進めることを決意した。

 

「磨杵作針(ましょさくしん)」——

 

このスキルは確かに不遇だが、育ち切れば最強の力を得られるかもしれない。

 

そんな期待を胸に、俺は再び剣を握りしめた——。

 

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