何度でも

雨森里子

プロローグ

俺の人生を変えた三つの出来事を話そう。



まず一つ目は、君と出会えたこと。


もし神様なんて存在が俺に君を与えてくれたのだと言うならば、俺は見えないそいつの存在を信じて毎日何度でも『ありがとう』と言おう。


だって君は、俺にとってどれだけの貴重な宝石にも代えられない最高の贈り物だっただから。



二つ目は、君を愛したこと。


君は俺を可哀想だなんて言ったけれど、俺にとって君を愛することは、決して悲しいことじゃなかった。一度だって後悔なんてしていない。


君の傍にいられるだけでいつだって俺は幸せで、これ以上の見返りなんて存在しないのだから。


君が俺から離れると言うのなら、俺は何度でもこの腕で君を抱き締めるよ。



三つ目は、…何と言えばいいのだろう。


いや、やっぱり三つだけじゃ足りない。君の存在そのものが、俺の全てを変えてしまったから。


君と出会ってから、俺の人生はすべて君のために存在しているんだと、そう思うようになった。



けれど、それほど大切に思っていた君が、俺の前から消えてしまった理由を、今でも自分の中で何度でも繰り返し考えてしまう。


あの時、俺がもっと大人だったなら、君は俺から離れて行かなかった。


もっと大人だったなら、きっと君をもっと上手く愛して上手く支えてあげられた。


あんなことにはならなかった。…なんて思っても、もうどうしようもないのだけれど。



それでも、俺は今でも夢を見る。


手を伸ばして抱き締めようとすると、君がまるで泡のように消えてしまう夢。


もう二度と離れたくはないのに、君は何度も何度も俺から離れてしまう。


俺はガキだったけれど、俺なりに精一杯君を愛していた。


君がまた俺を『馬鹿ね』と笑ってくれるように、君がまた俺を好きになってくれるように、




何度でも






何度でも俺は君の心を奪いにいくよ。

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