アイドルとはいったいなにか【わたしのアイドル参加作】

カイ 壬

アイドルとはいったいなにか

 私はこれまでアイドル歌手を追いかけたことが一度もありません。

 家が貧しくてアイドルグッズなどにお金をかけられなかったからです。

 そこで今回のお題である「アイドル」について、私なりに定義してみます。


 そもそも「アイドル」とは「偶像」「崇拝される人や物」のことです。

 つまり芸能関係だけが「アイドル」というわけではありません。

 極端な話、道端に立っている「偶像」であるお地蔵様も「アイドル」なのです。


 「崇拝」という言葉から、「偶像」とはいえガンプラのようなものを「アイドル」と呼ぶのは無理筋でしょう。人気があるだけで「アイドル」と呼ぶのはかなり苦しい。

 海外だとイースター島の「モアイ像」は「崇拝される物」に該当するので「アイドル」で差し支えないはず。渋谷の「ハチ公像」は根強い崇拝こそされていませんが、多くの人がお目当てで訪れるので「アイドル」と言えないこともないですね。


 では芸能関係で仕事をしていれば「アイドル」なのでしょうか。それでは不十分です。「崇拝される人」という定義を満たしていないからです。

 崇拝とは「あがめられる」という意味です。ある種の憧れといえます。


「私もこんな人になりたい」より「この人を応援したい」「関連するものを手元に置いておきたい」と思える人こそ「アイドル」ではないでしょうか。

 つまり自分と同列ではなく、アイドルのほうが一段も二段も上という認識です。


 応援のため、おまけ欲しさで必要もない商品を買う。

 この消費行動が成立するのが真の「アイドル」なのです。



 つまりガンプラは「アイドル」でなくても、ガンダムそのものは「アイドル」なのです。

 ガンダムが「アイドル」だからこそ、「アイドルを手元に置いておきたい」という消費行動が喚起されます。つまりガンプラが売れるのです。



 「歌って踊ってサービスする」人がすべて「アイドル」ではないのです。

 ですが「アイドル声優」は「歌って踊ってサービスする声優」の括りなのもまた事実。

 今回の企画である「わたしのアイドル」の「アイドル」もおそらくは「歌って踊ってサービスする歌手」を意図していると思いますが、本来の「アイドル」からすれば範囲はきわめて限定的です。



 私は「歌って踊ってサービスする歌手」が好きではありません。認知度を高めてよりよいコンテンツとなるべく切磋琢磨する「アイドル歌手」を否定はしませんが、その姿を真剣に応援する気にもなれないのです。


 そこに今回の企画が立ち上がったため、私は書きようがないと判断してこれまで参加を見合わせていました。

 それなのにあえて執筆したのは、多くの皆様に「アイドル」とは「歌って踊ってサービスする歌手」だけではないことを知っていただきたかったからです。



 ガンダムも「アイドル」ですし、マクロスも「アイドル」です。

 とくにマクロスは「歌姫」と呼ばれる声優や歌手が音楽をリリースしてライブも行います。これも狭義では立派な「アイドル」ですね。


 アイドルマスターもラブライブも「アイドル」です。うたの☆プリンスさまっ♪もアイドリッシュセブンも「アイドル」です。


 いずれも「歌って踊ってサービスする声優」がアイドル視されますが、その本質はガンプラである声優のほうではありません。

 消費を喚起するコンテンツであるアニメやゲームそのものが「アイドル」なのです。

 その下で活動しているアイドル声優が「アイドル」と多くの方は認識していますが、作品なくしてグループや歌手は存在しえず。



 「歌って踊ってサービスする歌手」つまり狭義の「アイドル」を生み出すことに長けたプロデューサーさんはいくらでも存在します。

 しかし、「アイドル」が活躍するコンテンツを生み出すプロデューサーさんは数が少ないですね。


 現役歌手やグループでアイドル活動できるのは、そういう「物語」つまりコンテンツが確立しているからです。

 「視聴者公募型アイドル」「会いに行けるアイドル」などのコンテンツを生み出せれば、その下で活動する人たちは「アイドル」として消費者を惹きつけることができるのです。



 ここまであけすけに書いてしまうと、おそらく賞は獲れないでしょう。

 しかし、皆様が認識している「アイドル」は、本質を捉えていないのではないでしょうか。

 「偶像」であり「崇拝される人や物」である「アイドル」は、現在はほとんど見られません。

 だからこそ、私は今のアイドルに興味が持てないのかもしれませんね。



 自称アイドルが乱立して、消費を支えるだけでは真の「アイドル」とは呼べません。

 たとえば美空ひばりさんや山口百恵さんのような、存在するだけで頭が上がらない、圧倒的な存在感を醸し出す真の「アイドル」を目指す若い世代がいてもいいでしょう。

 そういう人たちなら、私は推せると思うのです。




 ─了─

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