第27話
「それ、セクハラな」
「……………」
「とっくに別れた」
「えっ、そうだったんですか。それでやけ酒…」
「そうじゃねぇよ。彼女の希望で同棲始めたけど、俺の覚悟が足りなかったってだけだ」
「覚悟。結婚とかの、ですか?」
「いや、一緒に住むと相手の今まで見えなかったものも見えるだろ。それを見ても気持ちが変わらないっていう覚悟。ま、それはお互い様だろうけどな」
仲川さんは最寄り駅で降りていった。
私は仲川さんの言葉を反芻していた。
"相手の見えなかったもの"
私の片想いは、まさに柾木さんの見えるものだけしか見ていない。
見えなかったものが見えても、私は柾木さんを好きでい続けることが出来るのだろうか。
ましてや、月に二回程度、顔を合わせるだけ。
しかも、いち客と店長の間柄で見えなかったものなんて見えてこないだろう。
亜沙美の言うように今一歩先に進めなければ始まらないというのはこういうことなんだろう。
考えるとループする。
進めなければ始まらないけど、進めなければ失うことはない。
結局まだ私は勇気がないのだ。
羅奈ちゃんにもらった勇気はまだ私には温存しておくだけになりそうだ。
今日、勢いで会いに行って勇気の無駄撃ちをしなくて済んで良かったのかもしれない。
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